こうしたサービス化への取り組みの一歩として実現したのが、「セキュアファイルトランスファー(SFT)」機能である。これは、オフィスで作成したファイルを安全に「MAZAK SMARTBOX」経由で工作機に届けることができる仕組みである。これによりファイルのアップデートや設定の変更などを安全性を確保したうえで一斉に行えるようになる他、マスターデータを保持し現場のチューニングなどとの差異を分析できるようになるので、トレーサビリティの面や作業効率改善などにも効果を発揮する。
堀部氏は「現状ではオンプレミスでの対応だが、今後はクラウド上のファイルにも対応していくつもりだ。これを実現できればクラウド上で共有した設定などをその他の工場や地域などに利用するような使い方も可能になる」とメリットについて語る。
こうした新たな取り組みについてヤマザキマザックではまず自社工場で実践し成果が出る形を構築してから外部への販売を進めていくとしている。既に同社では「iSmart Factory」として、自社工場のスマート化を推進し、その中でさまざまな実証を進めている。「セキュアファイルトランスファー」についても実証を通じ、最適な形を模索していく。
こうした新たなサービスや付加価値を実現していくためには、シスコシステムズ以外にも仲間作りが必要なようにも見える。新たなコラボレーションについて堀部氏「実際に取り組みは進めている。ネットワーク構築の面ではネットワンシステムズと協力することが決まっており、今後は競合企業なども含めて協力できるところは協力していく」と述べる。
また、シスコシステムズもヤマザキマザックも、既に製造業IoTで新たな枠組み作りを進めているファナックの「FIELD system」のパートナーとなっている※)。
※)関連記事:ファナックのスマート工場パートナーに200社以上が参加、デファクト形成へ加速
これらの取り組みとのすみわけについては「IoTの世界は業界や業種、地域などごとに仲間作りを進めていく必要がある。『FIELD system』はある意味で会員制のサービスのような部分がある。一方でわれわれが進めているのはよりオープンな『つながる環境づくり』である。その意味で少し位置付けが異なっている。ただ、最終的な勝負となるのはそれぞれがノウハウを生かしたサービスの領域になる。そのためにはより早く『つながる』環境を作り上げる必要がある。そのためにはより広く協力を進めていく。当然『FIELD system』とも協力しながら環境づくりを進めていく」と述べている。
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