経営再建に向けた構造改革の具体的な取り組み状況を見ると、堺事業所への本社移転(2016年7月1日)、東京(芝浦)オフィスの幕張ビルへの移転(同年9月30日)など事業所や拠点の最適化を進めた。Roxyグループ(香港)との合弁解消(同年9月26日)、SMS(国内)の吸収合併(同年11月1日決議)なども行うとともに、人員の適正化、資金政策なども実施している。さらに2016年11月2日には、子会社であるシャープビジネスソリューションが保有するシャープビジネスコンピュータソフトウェアをNTTデータに譲渡することなども発表している。
また、収益責任を明確化する分社化経営、集中購買の推進などのサプライチェーンの改革、統制強化などにも取り組んでいる。さらに、信賞必罰のための具体的な制度づくりを進めるとともに、各ビジネスユニットの人材の専門化を高め、事業の競争力強化を高めるためにローテーション制度の廃止や採用方針の見直しなども進めている。
並行して成長軌道への転換への取り組みも開始しており、有機ELディスプレイのパイロットライン投資や製品ラインアップの拡充など成長事業への投資を推進していく。協力会社からの生産設備の買い取り、出資や内製化を通じたサプライチェーンの一貫コントロールにより、キーテクノロジーを同社主導で強化していく。成長を担う人材の確保も行う。
この他「One SHARPの考えのもと事業間のシナジーの最大化や全社経営資源の有効活用により全体最適を追求していく」(野村副社長)とオールシャープの総合力を発揮していく方針だ。
中期的な事業については「シャープならではの『人に寄り添うIoT』を実現し、当社が得意とする音声対話や人の行動分析などを生かしたサービスを軸に、クラウドでつながった身近な機器が一人一人の生活シーン全体に寄り添うようなスマートな世界を目指す」(野村副社長)とし、同社のもつAIとIoTを融合したAIoT技術やこれを搭載した商品群、ロボット技術、無線通信技術、各種センサーやディスプレイなどで強みを生かしていく。
シャープ 取締役社長 戴正呉氏は「今の事業を全部しっかりやっていきたい。まず、販売を拡大して黒字転換を図ることを目指す。IoTの技術により、さまざまなものをつなげていくことでスマートホーム、スマートファクトリー、スマートシティなどを実現していく。シャープはこの分野は一番強い」などと業績回復への自信をみせた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.