シャープの2015年度(2016年3月期)決算では、売上高が2兆4615億円、営業損失が1619億円、経常損失が1924億円、当期純損失が2559億円という厳しい結果になった。ただし「鴻海グループとの戦略的提携により、強固な取引関係の確立と財務基盤の強化を図る」(シャープ社長の高橋興三氏)ことで、事業の安定的な継続が可能になるとした。
シャープは2016年5月12日、東京都内で会見を開き、2015年度(2016年3月期)の決算概要を説明した。売上高が前年度比11.7%減の2兆4615億円、営業損失が同1139億円悪化の1619億円、経常損失が同959億円悪化の1924億円、当期純損失が同336億円悪化の2559億円となった。2期連続の赤字によりついに債務超過に陥ったものの「鴻海グループとの戦略的提携により、強固な取引関係の確立と財務基盤の強化を図る」(シャープ社長の高橋興三氏)ことで、事業の安定的な継続が可能になるとした。
また同日開催の取締役会で、2016年6月末をめどとする鴻海グループの出資が完了後の経営体制を担う新任取締役候補者9人(鴻海グループが6人、シャープが3人を推薦)を決定。9人のうち鴻海グループのナンバー2で副総裁を務める戴生呉(たい・せいご)氏が、代表取締役社長に就任する人事も内定した。他の8人の取締役の役割は、鴻海グループの出資が完了後に決めるとしている。なお、これらの役員人事は2016年6月23日開催予定の定時株主総会およびその後の取締役会、監査役会で正式決定となる。その時点で高橋氏は取締役に留任するものの、鴻海グループの出資完了後に取締役を退任する予定だ。
2015年度の決算発表に合わせて、2016年度以降に各事業の減益要因となりそうな“膿”を出すため、体質改善処理・構造改革費用として損失計上を多数実施している。家電を取り扱うコンシューマーエレクトロニクス事業では、不振だった中国販売子会社の売上割戻しと販売促進費を処理するためなどに約358億円の損失を、エネルギーソリューション事業では、太陽光パネルの原材料となるポリシリコンの評価価格引き下げに伴う77億円の損失を計上した。ディスプレイカンパニーと電子デバイスカンパニーについては、たな卸資産の評価損として約470億円の損失を計上している。
これらの結果として、2016年2月に発表した通期予想の営業利益100億円の見込みに対して、1719億円下ぶれして営業損失が1619億円となった。体質改善処理・構造改革費用を除いた営業損失は407億円である。
そして2015年度末時点での純資産は、2015年度第3四半期(2015年10〜12月)末に比べて1914億円減少し、312億円の債務超過に陥った。ただし、鴻海グループの出資が完了すれば純資産は3888億円増加するため「債務超過による影響は一時的なものにとどまる」(高橋氏)としている。
たな卸資産も“損切り”によって2015年度第3四半期比で1147億円減の1843億円となった。月商比でも1.39カ月から0.90カ月に低下しており、鴻海傘下での事業運営の足かせにならないようにしていることが分かる。
5つある事業別の業績でも、複合機の販売が好調だったビジネスソリューション事業を除いて厳しい数字が並ぶ。しかしそれらの営業損失の多くは体質改善処理・構造改革費用として計上されたものだ。
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