IoTによる製造業のビジネス革新の動きとして「サービス化」への関心が高まっている。その1つの基盤として、IoTによって得られたセンシングデータを流通させる「データマーケット」が注目されている。このデータ流通市場構築にオムロンが乗り出すことを表明。なぜ、オムロンはデータ取引市場に参入するのだろうか。
インダストリー4.0やインダストリアルインターネットコンソーシアムなど、全世界でIoT(モノのインターネット)による製造業のビジネス革新の動きが加速している。マスカスタマイゼーションを実現するスマートファクトリー実現の動きなどの一方で、IoTがもたらす革新は得られるデータを生かした「製造業のサービス化」によるビジネスモデル変革だとされている。
ただ「製造業のサービス化」といっても、多くの企業にとっては新たなビジネスモデルを見つけ出すのが難しく、悩みを抱えている。こうした中でIoTにより得られる、従来は取得するのが難しかったデータの活用を活性化する手段として注目を集めているのが「データ流通市場」である。
「データ流通市場」は、IoTによって蓄積したデータの提供元と、データを活用して新たなビジネスを展開したい事業者をマッチングさせる仕組みである。この「データ流通市場」の構築に、オムロンが乗り出すというのだ。
オムロンが目指しているのは、データの中でもIoTにより収集が可能となったセンシングデータの流通市場である。必要な時に必要なセンシングデータのやりとりを取引市場により可能とすることで、製造業を含むデータ提供元に新たなビジネスを生み出すことができる。一方で、ビジネスのアイデアやニーズはあるが必要なデータを持たない企業などにとっては、これらのデータを市場から調達すれば、新たなビジネスを構築することが可能となる。
その背景として、オムロンが豊富なセンサー群を数多くの機器に提供しているということがある。オムロンのセンサーは共通でデータを生み出し続けているにもかかわらず、従来は個別の業界やシステムなどに閉じた世界となっており、一部でデータ活用を行ってはいるものの「面での活用はできていなかった」とオムロン執行役員常務 最高技術責任者(CTO) 兼 技術・知財本部長の宮田喜一郎氏は述べている。
新たに「センシングデータ流通市場」を構築することで、従来は「点」でしか実現できなかったサービスを「面」で展開できるようになる可能性が生まれる。例えば、「見守り」サービスを考えてみた時、各社が「見守りポット」や「見守りエアコン」「見守りトイレ」「見守りベッド」などの個別製品での「見守り」しか実現できていなかった。しかしデータを横断的に活用できるようになれば、「見守り」の対象となる人の生活や行動動線全てを「面」でカバーできるようになる。
ただ、オムロンはセンサーの主要メーカーとはいえ、「取引市場」については門外漢である。なぜ、オムロンがこうした「センシングデータ流通市場」の構築に動いているのだろうか。それにはカギを握る技術の存在がある。
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