上級セグメントになるほど、自動車メーカーごとの個性が薄れつつある。数え切れない程の装備や快適な乗り心地などを追求する点で方向性が似通っていることと、かけられるコストに余裕があるためだ。しかし、コンパクトカーに乗ってみるとブランドごとの考え方やこだわりが見えてくる。
輸入車と聞くとドイツの高級車を想像する人が多いように思う。実際、日本で売れている輸入車の7割近くはドイツの4ブランド(Volkswagen/Audi/BMW/Mercedes−Benz)が占めているから、その感覚はおよそ正しい。
ドイツ車が支持されるのは、日本車に近い品質の高さと、日本車にはない高級感という魅力によるところが大きい。しかし、数え切れない程の装備や快適な乗り心地などを追求するあまり、近年は高級車になるほどブランドごとの個性は希薄になる傾向にある。
そこへいくと、コンパクトカーはかけられるコストやサイズなどに制約があり、開発や生産で注力するポイントもメーカーによって異なるため個性が強く出る。先日、輸入車コンパクトカーを集めた試乗会に参加する機会を得たので、そこで個性豊かなモデル4台をピックアップして試乗し、それぞれのメーカーやブランドの個性と、それを生み出す作り込みぶりを探ってみた。
最初に試乗したのはフランスのDSオートモビルの「DS3カブリオ」。DSオートモビルは2015年、DSのラインアップ完成に伴ってCitroen(シトロエン)から独立したブランドである。とにかくディテールにこだわった作りが特徴で、ヘッドライトやバンパー、インストゥルメントパネルなど、クルマを印象づけるエリアにクラシカルで優雅な装飾が施されている。
しかしながらDSシリーズでは「DS5」「DS4」に続く末弟のためか、インテリアの仕上げに粗さも感じられる。インストゥルメントパネル周辺はピアノブラックの仕上げだが、表面には塗装の柚子肌がうっすらと残っているのだ。このあたりは、日本のサプライヤであれば別の製法を用いてコストと仕上げを両立させる部類のものだ。フランスの自動車メーカーらしく、フィニッシュよりデザインを重視するというモノづくりの優先順位を感じさせる。
DS3カブリオを走らせても、日本やドイツの自動車メーカーとは異なる仕上がりがいろいろと感じ取れた。例えば、試乗したグレード「chic」に搭載されているのは排気量1.2l(リットル)のダウンサイジングターボに6速ATを組み合せているが、エンジンは十分にトルクがありシフトの制御も非常にスムーズで快適ではある。しかし、3気筒エンジンなのでアイドリング近辺では時々特有の振動がある。同じ3気筒エンジンでも、BMWのMINIブランドでは、こうした部分を感じさせないようにしつけられているもので、やはり開発の優先順位や煮詰め方に企業姿勢の違いを感じさせる。
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