インテリアも実にそっけなく道具に徹している。日本ではコンパクトなミニバンのように見られているが、実は欧州ではフルゴネットと呼ばれ、ライトバンに近い商用車ベースのクルマなのだ。それだけに座席前方の頭上には手軽に荷物を収納できるコンソールやボックスがあり、広々とした室内空間はアイデア次第でどんな風にも活用できる使い勝手の良さが魅力だ。
カングーのエンジンはブーストが掛かれば十分に軽快な走りを見せてくれる。パワーユニットは新開発の排気量1.2l直噴ダウンサイジングターボと6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合せている。
変速は実にスムーズだが、トルクコンバーター式ATとは異なり、発進時にエンジン回転の上昇やトルクの増幅がないDCTなので、ややもたつくのが弱点だ。このあたりが快適性より実用燃費を重視するフランスの自動車メーカーの姿勢を意識させる。
乗り味でフランス車らしさを感じさせるのは時速80kmを超えてから。乗り心地は絶妙なまでにフラットになり、高速巡航が本当に快適だ。車の動きが大きいので、ちょっともったりした感じはあるけれど、これがカングーの味だと思えば許せてしまう雰囲気を持っている。
続いて試乗したのはBMWのMINIブランド「クーパーSD」。Dはディーゼルの意であるが、エンジンを始動させてもアイドリングはガソリン直噴と変わらない。走り始めるとわずかにゴロゴロとディーゼルらしい音は出すが、それよりも踏み込んだときのトルク感が特徴的だ。スポーティーなクーパーSの名前はディーゼルでもだてではないと思わせるほど。
エンジンは1200回転も待っていれば相当にトルクフルで、サウンドも含めてかなりスポーティー。立ち上がりはややダルな部分もあるけれど、その一瞬のタメすらドライビングを楽しいものにしてくれている。加速はガソリンエンジン搭載のクーパーSよりも豪快なほどだ。サスペンションはフラットなライド感で非常に安定していながらステアリング操作にも機敏に反応し、乗り心地もまずまず。この仕上がりの高さこそミニの持ち味だろう。ステアリングはやや重めの感触だが、これもスポーティーな個性だ。
今でもイギリスで生産されるなど、MINIブランドのアイデンティティーを大事にしているが、その中身は最新のBMWの技術が惜しげもなく投入されている。そのため、乗り味はイギリス車というよりドイツ車に近い。
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