ダイハツ工業を完全子会社化したトヨタ自動車に、スズキが業務提携を持ちかけた。今後、両社で協業について検討を開始する。トップ同士が話し合ったのは2016年9月末で、「具体的なことはこれからゆっくり考える」と口をそろえて話す。
スズキとトヨタ自動車は2016年10月12日、東京都内で会見を開き、業務提携に向けて検討を開始すると発表した。両社とも「(いつ、何ができるかは)まだ何も決まっていない。議論がスタートする段階」だといい、具体的な協業分野は今後詰める。
スズキ 会長の鈴木修氏がトヨタ自動車 名誉会長の豊田章一郎氏に相談したのをきっかけに協業に向けた協議がスタート。スズキは将来技術の開発に課題を抱えており、一方のトヨタ自動車は欧米と比較して“仲間づくり”が遅れているため、業務提携によって両社の課題解決につなげる。
スズキからトヨタ自動車に対し、情報分野など先進技術や将来技術で協力できないかとスズキから打診したのが業務提携の検討のスタートだという。
スズキの場合、国内は軽自動車が、海外ではインドが事業の中心だ。しかし、こうした市場であっても「従来の伝統的な自動車技術を磨くだけでは将来が危うい。こうした悩みを度々、豊田章一郎さんに相談してきた。思い切って、トヨタの協力を得られないかと章一郎さんに話してみた」(鈴木修氏)。そこで「スズキとトヨタ自動車の協力について、協議だけはしてみてもよいだろうと言ってもらい、(社長の)章男さんと相談するチャンスを得た。いろいろと話した結果、スズキとの協力に関心を示してもらった」(同氏)。
トヨタ自動車としても単独で取り組む限界を感じており、業務提携を前向きに検討する。情報分野を中心に競争環境が変化しており、エネルギー問題や環境技術、安全性向上に加えて自動運転技術など同時に取り組むことが求められているためだ。インフラと協調する技術の開発や標準化では“仲間づくり”が重要な要素になってきたとしている。
豊田章男氏は「スズキの変化に対応する力、周囲を巻き込む力にほれた。重要なのは技術や商品を開発する力だけでなく、周囲を巻き込んでいく力でもある。スズキは人徳もあって巻き込む力が大きい。学ばせてもらいたい」と述べた。
しかし、具体的な協業分野や資本提携の可能性、時期について、会見に出席したトヨタ自動車 社長の豊田章男氏と鈴木修氏は「何も決まっていない」の一点張りだった。鈴木修氏が豊田章一郎氏に協業を打診したのが2016年9月末、鈴木修氏と豊田章男氏が面会して協議を決めたのは先週末だというのが理由だ。
また、豊田章男氏は「イメージであってもこの場で協業の形について述べることはできない。私の発言を基に社内の話し合いが進んでしまう」と説明した。
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