リアルなCG映像でのシミュレーションにこだわるのは、「自動運転システムの検証には空間データを充実させることが必須だが、公道だけでは現実的には難しい。都合よく条件をコントロールできないので、テストしたい条件がそろうのを待たなければならない。試しておきたい環境の中には、めったに発生しないものもある。あらゆる場所の空間データを取りそろえるのはコストが高過ぎる。さらに、日米欧の自動車アセスメントでは試験内容も膨大になり、実車のみでは対応が難しくなっている」(尾小山氏)。
シミュレーション環境は、ゲームエンジンと車両の挙動モデル「CarSim」をESSE(Entire System Simulation Environment)上で同期させる形で駆動する。検証したい制御ECUのソフトウェアに基づいてCarSimが車両の挙動を再現、その挙動の通りにゲームエンジン内で車両が走行するよう、リアルタイムにCG映像化する。
ESSEはこれまで、複数の車両の車車間/路車間通信(V2X)や、市街地の交通流シミュレーションなどで実績があるという。CarSim以外にも、「Simulink」「System C」「Virtualizer」などのツールに対応している。また、ゲームエンジンとECUは、CAN、FlexRay、LIN、イーサネットなど自動車のシミュレーションに必要な仮想バスで接続できる。
ギガビットイーサネットでESSEにPCを接続することにより、シミュレーション環境を走る車両モデルを増やすこともできる。
このシミュレーション環境の利点は「ソフトウェアの修正の成果をすぐに実験できることだ。実車でしか検証できない場合、場所と車両を確保するので修正の効果を試せるまで時間がかかるが、シミュレーションでならパラメーターの変化を確かめやすい」(バーテックス 営業技術部 ビークルシミュレーション担当部長の中西康之氏)。
また、「ユーザーの対象は自動車メーカーやサプライヤに限らず、学生でも自動運転システムの開発に挑戦できるだろう。クルマを用意できなくても、一定のところまでシミュレーションで検討することが可能だ」(同氏)。
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