ロボットが一般化するために「人間とどんな関係を築くか」は避けて通れない問題だ。正解はまだ見えないが、Willow Garage出身者が手掛けるロボットを通じて「今後のサービスロボットデザイン」を探ってみたい。
前編ではサービスロボットにおける「Human-Robot Interaction(HRI)」の重要性、これまでの研究背景と課題について述べた。後編では、この課題に対するWillow Garageの取り組みやWillow Garage出身の3人のロボットデザイナーが手掛けるロボットについて、そのこだわりを観察し、今後のサービスロボットのデザインにおける手掛かりを探ってみたい。
・Willow Garage出身デザイナーに学ぶ、サービスロボットのインタラクションデザイン(前編)
Willow GarageのHRI研究グループでは開発したPR2を使って、
を研究の3本柱として活動していた。
特にHRIの研究については、PR2と他のロボットプラットフォームを使い、ロボットの形状や振る舞いが与える影響についての比較分析を行うことで、ロボットに対し、人がどのような印象で受け止め、反応するかの理解を一般化することに注力した。
ロボットの姿勢が人のパーソナルスペースに与える影響を調べたり、アニメーターやサウンドデザイナーとの協業によってロボットの表現力を改善する方法を探したり、他のインタラクションの研究(人-人、人-動物、人-エージェントなど)のうち、どのモデルが最も人-ロボット間の関係に当てはまるかを調査したりしていた。
また、もう1つの注力領域として、人がロボットに対して持つ認識が、どのようにインタラクションの効果に影響を与えるかということも研究していた。人がロボットの状態について持つ印象、個人の認知能力や安全に対する感覚、事前知識などが、ロボットの行うタスクの評価や、タスク遂行後の人の反応にどのような影響を及ぼすかを調べていた。
例えば、ロボットの能力に対する事前の期待値の違いが、どの程度タスクの成否や人の感じ方に影響を与えるかや、どのようなデザインがロボット自身のできること・できないことを正しく人に伝え、意図した通りに扱ってもらえるのか、といったことを調査していた。
HRIのチームをマネジャーとして率いていたのは、Willow Garage参加前はPARCやNokiaに勤め、Willow Garage閉鎖後にはGoogle XでProject Wing(UAVによる宅配サービス)のUXデザインを研究していたLeila Takayama氏だ。彼女はHCIと心理学の両方の博士号をスタンフォード大学で取得しており、Fast CompanyやWorld Economic Forumで表彰されたこともある著名なインタラクション研究者だ。
また、前述のようにHRIチームはアニメーターの力を借りていた。Willow GarageのHRIチームにアニメーターとしてPixarから加わったのがDouglas Dooley氏だ。Pixar在籍13年の間にモンスターズインクやファインディング・ニモ、カーズなどさまざまなアニメーションの制作に携わっていた彼はWillow Garageではロボットのボディーランゲージの開発やロボットのキャラクターデザインを研究した。在籍期間は1年未満と短かったが、Willow Garageのロボットデザイナーたちは、ロボットの感情を人に伝えるためにはどのようなデザインが有効かを学び、表現をなるべくシンプルにすることを学んだという。
そして、Willow Garageで数少ないインダストリアルデザイナーとして活躍していたのが現在Saviokeの共同創業者、プロダクト・デザインリードを務めるAdrian Casono氏、Simbe Robotics社の共同創業者、プロダクトデザイナーを務めるJeff Gee氏、そしてFetch Robotics社でデザインリードを務めるDavid Dymesich氏の3人だ。シリコンバレー最高のロボットデザイナーと呼ばれるこの3人の手掛けるロボットとそのこだわりについて見ていこう。
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