さて、この話と直接絡むわけではないのが、もう1つ気になるのがThread GroupとOCFが協定を結んだ事である。発表文によればコネクティッドホームにおける相互接続性を担保する目的で“Liaison Agreement”を結んだ、とある(The Thread Group and Open Connectivity Foundation Create Liaison Agreement to Increase Application Connectivity and Choice in Connected Home)。
日本語訳すれば「連絡協定を結んだ」というニュアンスで、それほど強いつがりを持つわけではないが、公式にお互いが連絡し合える窓口を設けることに同意した、という感じだろう。
前身のOICも含めてOCFはTransport層は何でもアリという考え方であり、下の写真にThreadが入っていなかったのは、単にその時点でThreadが無かったから、という感じもしなくもない(下写真は2014のIntel Developer Forumで紹介されたもの)。
一方のThreadであるが、以前説明した様に基本はTransport層の仕様であり、ZigBeeをベースにメッシュネットワークを実現するプロトコルである(IoT観測所(3):メッシュネットワークをキーにIoTへ進む「Thread Group」)。
従って両者はきれいな補完関係にあるから、OCFとの連携は不思議ではない。また、ThreadはGoogleのBrilloでもサポートされており、その意味ではこの提携そのものに不思議は点はなく、AllJoynでもThreadは利用可能である。例えばNXP(というか、Freescaleというか)が公開しているこのビデオでは、Threadプロトコルを利用してAllJoynのフレームワークを稼働させている。
ただここにQualcommが2015年7月にThread GroupにBoardとして加盟している事実を加味すると、異なった意味合いに聞こえてくる。話を蒸し返すようだが、QualcommはAllSeen Allianceを立ち上げた当事者であり、AllJoynもまた物理層には依存しない事をうたっている。なので、Threadをサポートするのは問題ないし、上に書いたように既にThread上でAllJoyn Frameworkが稼働するデモすら存在する。
ところでQualcommはいわずと知れたスマートフォン向けのプロセッサとモデムのベンダーであるが、同社はWi-Fi/Bluetoothはソリューションとして提供するがIEEE 802.15.4は今のところ対応していない。これがゆえに、当初のAllJoynのデモはほとんどがBluetoothないしWi-Fiで行われていた。今後、Threadベースの製品が増えてきた場合にQualcommはどう対処すべきか。
理屈ではQualcommが自社モデムにIEEE 802.15.4のサポートを追加すればいいのだが、これにはコストもかかるし普及に際しても時間が必要だろう。であれば、IEEE 802.15.4のサポートはOCF側に任せしてしまい、Qualcommベースの製品は先にMicrosoftが紹介したようにブリッジ経由でThreadのデバイスに接続するとすれば、IEEE 802.15.4の対応を急がなくてもThreadデバイスを利用できることになる。
さすがにこれはちょっとうがちすぎなのかもしれないが、さまざまな標準規格が提携してゆくと、こうしたアプローチもありえる様に筆者には考えられる。
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