インテリアデザインも手描きのスケッチから始まる。エクステリアデザインが4分の1などのスケールモデルを使って初期のデザイン検討を行うことに対し、インテリアデザインは、パッケージングがある程度決まってくると、ベニヤなどで囲った箱状の空間にシートやステアリングペダル類を取り付けた簡易モックアップで基本的なドライビングポジションを再現する。
この簡易モックアップに建築模型などで使われるモデルボード(数mmの厚みの発泡スチロールをケント紙でサンドイッチしたもの)を使って、インパネやドアトリムを断面で表現するなどし、空間を体感しながら初期のデザイン検討と手書きのスケッチワークが同時進行で行われる。
最終的なデザイン提案でのモックアップは、クレイモデルや樹脂モデル、デザイン試作したシートなどを組み合わせたリアルなインテリアモックアップが作られる。地面から車両フロアまでの高さやエクステリアデザインと連動したピラー、運転席から見える範囲のボンネットなどが再現されているので、造形面での検討のみならず、乗降性や空間の雰囲気、視界といったものも検討することができる。
エクステリア、インテリア共にデザイナーと設計者が丁々発止でやりあうのはこの段階である。議論を重ねデザインモデルへフィードバックさせながらデザインが練り込まれていく。
当然のことながらデザイナーと設計者の議論がかみ合うには、デザイナー側にも、素材や加工法、加工条件などの知識や経験の蓄積が求められる。いくら魅力的な姿形を提案しても、狙ったコストの中で求められる数量を作れない限り、世の中に送り出すことはできない。
クレイモデルを使った古典的なデザイン手法に加え、近年では技術的な進歩により3次元データの活用が高度化してきているので、クレイモデルを作る前にデジタルでモックアップを作り、バーチャルリアリティ(VR)を活用するデザイン開発も導入が進んできている。
デザイン開発の早い段階でVRをはじめとした3次元データを使うことで、設計部門による設計検討の精度をより早い段階で高められるという効果も得られる。
エクステリアにせよインテリアにせよ、デザインという行為はユーザーの五感による体感に対して一貫性を持たせることで、そのクルマのコンセプトの特徴である“らしさ”を認識してもらうことを目指す側面がある。“らしさ”の最適な伝え方として、造形や色、質感を使って提案するのがデザインというわけだ。
最終的なデザイン案が決まると、意匠データが設計部門やサプライヤなどにトスされ、量産プロセスへ移行する。
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