世界の製造業が“デジタル化”の土俵に乗った時、違いを生み出すのは何か : 製造マネジメント インタビュー (3/3 ページ)
MONOist こうした「体験型経済」への移行に対し、日本の製造業にはどういう印象を持っていますか。
シャーレス氏 私が初めて日本に来たのが1984年のことだ。製造業の領域では日本企業は多くの実績を残してきた。「リーン生産方式」や「ジャストインタイム(JIT)」など世界の企業が参考にする手法を実現し、多くの成果を残した尊敬すべき企業が数多く存在する。
しかし、体験型経済の時代で新たなユーザー体験を生み出すには、日本の製造業は多くが「ドメインが狭い」という問題があると考えている。「その技術、そのドメインだけで新たな体験を生み出せるのか」という発想が必要である。
ここ数年は「デザインシンキング(デザイン思考)」が、新たな価値を生み出す考え方として注目を集めているが、われわれはこれをさらに変えていかなければならないと考えている。モノやサービスの形だけでなく、経験を起点に考える「エクスペリエンスシンキング(経験思考)」の発想が必要だ。こうして考えたときに製造業の未来は、「製造」だけにあるわけではない。むしろ製造以外の価値をどう組み合わせて「ユーザー体験」を作り出していくかということが重要である。日本の製造業はその点で、体験を中心とした体制とはなっていないように感じている。
現在進んでいるデジタル化やIoTの動きも全てはユーザーに新たな価値を提供するためのものである。そういう意味では「IoT」は単なるツールであり「IoE(Internet of Experience)」こそ、価値である。こうした価値を提供できる体制を早く創出することが必要だと考える。
ダッソーが考える企業や国、市場の9つの指標(クリックで拡大)出典:ダッソー
「エクスペリエンスの時代の成功を支える」、ダッソーCEOが事業展開に手応え
Dassault Systemes(ダッソー)社長兼CEOのベルナール・シャーレス氏は「今まさにエクスペリエンスエコノミー(経験経済)の時代がやってきている。われわれが提唱してきた『3Dエクスペリエンス・プラットフォーム(3D Experience Platform)』であれば、エクスペリエンスエコノミーにおける製造業の成功を助けられる」と訴えた。
“技術だけ”で革新を考える日本、幅広い視野に立つ世界
製造業のデジタル化が加速している。さまざまな変化が進む中、モノづくりはどう変化していくだろうか。さまざまなシステムでモノづくりを支えてきたフランスDassault Systemesのエグゼクティブ バイスプレジデントでCSOであるモニカ・メンギニ氏に話を聞いた。
“体験”を軸にビジネス基盤の提供を狙うダッソー、競合CADとの連携も可能に
ダッソー・システムズは年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2015」を開催。それに先立ちフランス本社の社長兼CEOのベルナール・シャーレス氏が記者会見を行い、製造業を取り巻く環境の変化と同社の取り組みについて説明した。
その製品が売れないのは「良くないから」だ――一橋大学米倉教授
日本の製造業の競争力低下に対する危機感が叫ばれているが、競争力を生み出すイノベーション創出にはどのように取り組むべきだろうか。イノベーション研究の第一人者である一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏に聞いた
ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。
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