世界の製造業が“デジタル化”の土俵に乗った時、違いを生み出すのは何か製造マネジメント インタビュー(2/3 ページ)

» 2016年06月07日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]

製造業にもたらされる3つの新しいポイント

MONOist 新しいデジタル化において、過去になかった新しさというのは具体的にどういう点に表れていると考えますか。

シャーレス氏 新しいデジタル化により、3つの点が具体的な変化として表れているといえる。1つ目は、産業用インターネットの存在である。IoTも含めて産業用途でインターネットの価値を享受できるようになった。

 2つ目が、スマートデバイスをより低コストで利用できるようになった点である。タブレットやスマートフォンなどのモバイル製品が高機能で低価格になり、手軽に活用できるようになった。

 3つ目が積層造形(アディティブマニュファクチャリング)技術だ。積層造形技術についても、既に25年以上が経過している技術で試作用途ではラピッドプロトタイピングとして定着しているものだ。こうした技術が再注目されている点でも、特徴的だといえる。

「モノ」から「体験」へ

MONOist こうした変化が進む中でダッソーでは製造業の未来をどう考えていますか。

シャーレス氏 ダッソーでは2012年に製造業の未来を見据えて、新しい戦略を立てた。その背景となったのが、製造業の将来は「体験型経済(エクスペリエンスエコノミー)」に支配されるということである。

 人々が製造業からモノを買う時、それは「モノ」そのものがほしいのではなく、「モノ」から生み出される「体験」を得たいと思っているからだ。従来は「モノ」と「体験」は切り離せないものだったが、デジタル技術の進化により、これらを切り離して提供できるようになった。象徴的なのが「Uber※)」だといえる。また、「モノ」を通した体験で考えても、Tesla Motors(テスラ)の電気自動車(EV)などは、1度買ったモノとしての価値だけでなく、ソフトウェアのバージョンアップにより、毎回新しい“体験”を提供できる。こうした新たな価値を生み出す“体験”を中心とした製造業のパラダイムシフトが起こっている。こうしたことが、デジタル化によって実現できるようになったのだ。

※)Uber:スマートフォンなどのアプリベースの自動車による移動サービス。タクシーの代わりのように使える。米国などではアマチュアドライバーがドライバー登録をして顧客を運ぶケースもあり、価格の安さなどが特徴である。

 この流れからダッソーが、「エクスペリエンスエコノミー(体験型経済)」の基盤として、訴求しているのが「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム(3D Experience Platform)」である。3Dエクスぺリエンス・プラットフォームは、CADなどで作成される3Dデータを基軸に、製品開発や生産、販売、マーケティングなど、製造業の一連のビジネスを支えるプラットフォームで2012年から訴求している。ダッソーでは1999年に業界に先駆けてPLM(Product Lifecycle Management)を提唱するなど、製造業の業務プロセスにおいて、新たな価値を訴求し続けてきたという歴史がある。3Dエクスペリエンス・プラットフォームについても、これら体験型経済へと移行する製造業の未来を見据えたものである。

photo ダッソーの製品革新の歴史(クリックで拡大)出典:ダッソー

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