「5S」の推進は誰しもが賛成し、その完成を望んでいます。しかし、多くの企業における実際の進め方は、どうもやらされ気分で、いつの間にか「5S活動」の声は消えてしまいます。そして数年たつと再び誰かがその必要性を叫びはじめ、その実施の検討が開始される。こういうことの繰り返しが多いためか、「5S活動」が一向に前進しない状況が続いているように感じます。
また、「5S活動」が安全衛生運動の一環としてとらえられているような気もします。本来の目的は、品質向上、稼働率向上、リードタイム短縮、安全性の確保などの企業の経営管理全般を対象とした運動であるというのが正しいとらえ方です。
しかしながら、実際に企業を訪問してみると「5S活動」が掛け声に終わっていて、ほとんどの場合は、経営者や現場の責任者に5S推進の意気込みを感じることができません。経営者や(「5S活動」の)事務局は従業員に何を求め、それをキチンと伝えているのかを疑わざるを得ないというのが実情のように思います。
「5S活動」で重要なことは、“全員参加によってチームワークで進める”“改善効果を狙った「5S活動」であること”“計画的に進める”の3つの項目がポイントです。「5S活動」の目的は、企業体質の強化による生産性向上です。「5S活動」は、全ての企業活動の基本であるという視点に立脚して、基本行動がシッカリとできる社員(人財)づくりによる企業の管理水準の向上を目指していく活動にしていかなければなりません。
「5S」は、以下に示した“5Sの定義”のように説明されていますが、「5S」の中でもとりわけ「整理」と「整頓」は重要です。「整理・整頓」は、“目で見て分かる”管理の方法でもあります。従って、「整理・整頓」を重点的に進めていくことで、多くの成果を得ることができます。
もうかっている会社ともうかっていない会社の違いに「整理・整頓」ができているか否かの差が歴然と現れていることは確かなようです。なぜ、「整理・整頓」が利益に直結しているのでしようか。例えば、「整理・整頓」ができていると、モノを探す時間が減り、労働の質が高まるため、生産性が向上し、収益の改善へとつながっていきます。
さらには、部品や仕掛かり品の管理が行き届くため、在庫の負担も軽減されます。不要なモノがなくなって作業の準備や段取りも円滑になるため生産性が向上します。「整理・整頓」の2つの“S”だけで、これだけの成果が見込めます。あらゆるムリ・ムダ・ムラを排除して、効率的な仕事ができる環境を整えることで、収益力を改善していくことができます。こうした発想が、本来の「5S活動」の基本的な考え方なのです。
加えて、「整理・整頓」のできている職場は、人の働き方について、新しい考え方ができる人達の集団となっていきます。このようなことが、活発な組織体質の確立やイキイキとした社員資質の向上もまた目的とするゆえんだと考えます。
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