これらの取り組みの他、クラウド対応を本格化していく。クラウドを生かした取り組みとしては、大きく分けて2つの方向性で取り組みを進めていく。1つはSOLIDWORKSなどをはじめとする従来の製造業向けシステムのクラウド対応を加速させ、新たな付加価値の提供を進めていくという方向性だ。例えば、SOLIDWORKSでは「デスクトップ」「コネクテッド」「オンライン」の3つの取り組みを推進。この内のオンラインはブラウザベースのサービスを展開。「オンライン」としての取り組みの一環として社内外のユーザー同士が交流できるコミュニティーサービス「MySolidWorks」を立ち上げ、2016年4月から日本語版もリリースする。ソリッドワークス・ジャパン マーケティング部 部長の山口有里氏は「イノベーションプラットフォームとしてクラウドを生かしたさまざまなサービスを展開していく」と述べている。
もう1つが、製造業のノウハウを生かしたアプリケーションを新たな産業に展開していくという方向性だ。実績のない産業分野でクラウド対応により提案を進めることで、初期投資などの負担を小さく導入できるようにする。その取り組みの代表的なものとして、国内でも取り組みを本格化させているのが、建築業界向けのソリューションだ。
ダッソー建築・建設業界マーケティング・ディレクターの森脇明夫氏は「建設業界の事業者は約7割が10人以下の事業者であり、オンプレミスの高額なシステムを導入するのは難しい。またプロジェクトベースで建設が動く状況で、季節変動が激しいという特徴があるのでクラウドサービスとしての提案が求められている」と述べる。
森脇氏はさらに製造業と建設業の生産性を比較すると継続的に成長を続けてきた製造業に対し、建設業では生産性向上が見られないという状況があるという。
「グローバルで製造業と建設業の生産性の伸び率を見た場合、建設業の生産性は高まっていないどころかむしろ下がっているという状況がある。これは同じ工場で同じメンバー、同じモノを作る製造業と違い、建築業はプロジェクトベースでものごとが進み、毎回異なるメンバーで異なる場所、異なるモノを作るために、知見がたまりにくいという状況がある。ただ、クラウドプラットフォームを活用することで、これらの環境でも知見を蓄積できるようにできる。また製造業が活用してきたノウハウを転用できる余地もある」と森脇氏は語っている。
具体的には、設計・施工・管理運営向けの可能な共通のビジネスプラットフォームを作り、このプラットフォーム上で情報をやりとりすることで業種ごとの協業が可能な協業モデルを構築。製造業のPLM(製品ライフサイクル管理)のようなビルディングライフサイクルマネジメントの実現を目指すとしている。
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