デジタルマニュファクチャリングとしては、インダストリー4.0やスマートファクトリーなどの動きが活発化しているが、ダッソーDELMIA事業部ディレクターの藤井宏樹氏は「スマートファクトリーや工場のインテリジェント化などの動きは世界中でさまざまな動きがあり、大きな注目を集めている。2015年までは様子を見ているような企業が多かったが、2015年後半くらいから実際に自社の課題を検討するような動きも出てきた」と述べる。
ダッソーでは、従来の生産システム&プロセスを最適化するソリューションとして「DELMIA」を展開してきたが、2013年7月には、製造オペレーション管理(MOM)システムの米国Aprisoを買収。2014年6月には生産・物流・人員配置などを計画するソフトウェアや業務計画策定・最適化支援ソフトウェアなどのオペレーション・プランニング・ソフトウェアを提供するオランダのQuintiqを買収しており、設計から生産、さらにオペレーションまで一貫してつなぐシステム連携を実現してきた。
これらを生かし、新たな製造プラットフォームとして、生産の拡大や縮小を容易にする「マルチスケールデジタル生産モデル」や、グローバルで柔軟に組み換え可能な生産システム、デジタル情報と物理情報を融合して検証する「V+Rモデルのリアルタイム意思決定支援」、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの統合、などを実現していく。
藤井氏は「5年後や10年後の製造業の姿を模索するような動きも増えてきた。大きなシステム統合や新たなプラットフォーム構築は少し先の話になると思うが、1つ1つ現実的なところで将来を見据えたシステム導入を進める動きも進みつつある。特にApriso関連のMOMソリューションは現場情報を活用するための最初の1歩として実際の導入につながるケースも多い」と述べている。
システムズ・エンジニアリングについては、以前から自動車業界を中心に活用が進んでいるが、3Dエクスペリエンス・プラットフォームにおいてさらに高度化させていくことを目指す。
システムズエンジニアリングでは、モデル化による早い段階での検証により実機テストのコストを削減できる点や手戻りなどを減らす開発生産性の向上、資産化や再利用による開発コストの削減などの効果があるとされているが、3Dエクスペリエンス・プラットフォームを活用することで「バーチャルツイン」の活用による新たなビジネスバリューの創出にもつなげられる。
バーチャルツインとは、物理情報を元に実物の形状、材質、挙動などを、そっくりバーチャル空間上に再現できる3Dのレプリカのことで、これとリアルタイムの物理情報や付加情報を結び付けることで、高度なシミュレーションを実現できる。また新たなビジネスプラットフォームとしても活用可能である。同社ではこれを自動車や航空機などの設計・開発だけでなく、都市開発などにも活用していく方針だ。ダッソー CATIA事業部シニア・ディレクターの磯基夫氏は「例えば都市などでは、太陽光を設置する場合、建物のモデルを活用することにより、室内の温度変化や発電量の関係などをシミュレーションして、効率を算出することができる」と述べている。
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