「自動でやってくれると助かるかも」というイメージを広めるため、日産自動車は自動で定位置に戻る椅子で駐車支援機能の利便性をアピールしている。
ちょっと疲れた時、代わりにやってもらえたら――。日産自動車は、自動で定位置に戻る椅子を通じて駐車支援機能「インテリジェントパーキングアシスト」の利便性をアピールしている。自分でやれるけれど自動でやってもらえたらちょっと助かる、そんな印象を椅子だけでなく自動運転に対しても持ってもらおうとしている。
「長時間の会議で疲れた、椅子をきちっと戻す気力も湧かない」という場面を想定し、手をたたくだけで自動で定位置に戻るよう開発されたのが「インテリジェントパーキングチェア」だ。
椅子が自動で戻る仕組みはインテリジェントパーキングアシストとは異なり、センサーや経路生成機能などを椅子に搭載しているわけではない。引きっ放しで放置された椅子の位置は、高所に設置したモーションキャプチャーシステム「OptiTrack」のカメラと、椅子の背もたれに装着した専用のマーカーで割り出す。使用したカメラは水平視野角70度、垂直視野角が49度で、8〜9m先まで認識できる。
このように検出した放置された椅子の位置と、椅子ごとにあらかじめ設定した定位置を基に、外部のコンピュータが椅子を戻す経路を自動で設定する。マイクが手をたたいた音を検知すると、この移動経路をWi-Fiでそれぞれの椅子に指示し、椅子のキャスターの代わりに内蔵した4つのタイヤで移動して元の位置に戻る。椅子同士がぶつからない経路設定も可能だ。
手をたたいて片付けることができる椅子の数に制限はないが、モーションキャプチャーカメラで室内をすきまなく俯瞰する必要がある。
このインテリジェントパーキングチェアは広告製作会社のBIRDMANが日産自動車向けに製作したもので、市販の予定はない。
インテリジェントパーキングアシストは「エクストレイル」で初めて搭載した。エクストレイルの場合、インテリジェントパーキングアシストは、カーナビゲーションやアラウンドビューモニター、ふらつき警報やクルーズコントロールなどとセットになったメーカーオプションに含まれており、税込み価格は32万7240円だ。
インテリジェントパーキングアシストは、「アラウンドビューモニター」を応用したもの。アラウンドビューモニターは、車両の前後左右に搭載したカメラの映像を合成し、車両の周囲を真上から見ているような映像を作成する。これを基に、インテリジェントパーキングアシストは自車の回転半径の中心や、隣の駐車スペースの車両に干渉しないエリアを判断し、目標駐車位置に向けた経路を決める。
この機能を使う場合、ドライバーは駐車スペースのそばで停止し、車載情報機器の画面から「車庫入れ(左)」「車庫入れ(右)」「縦列駐車(左)」「縦列駐車(右)」から操作を選ぶ。自動で制御するのはステアリングのみで、アクセルとブレーキはドライバーが操作する。障害物の確認などは常にドライバーが行う必要がある。
日産自動車は、ドライブの楽しさを残しながら単調で退屈な運転をなくしていく自動運転を目指している。
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