画像認識のデファクト企業「Mobileye」は自動運転時代の主役となるか自動運転技術(3/4 ページ)

» 2016年02月17日 11時00分 公開
[桃田健史MONOist]
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テスラの「モデルS」で体感したMobileyeの最新システム

 こうして事業を急拡大させているMobileyeに関して、日系自動車メーカーや大手ティア1サプライヤからは“疑問の声”が多く聞かれる。

 それは、「距離の測定では、ステレオカメラが優位であるはずなのに、単眼カメラでなぜ高精度の距離測定が可能なのか?」という点だ。

 これについてMobileye側は、「前方の対象物に対して、実際の距離を測るのではなく、信号機や道路標識などの“ランドマーク”と自車との位置関係を考慮し、画像の中にあるさまざまな物体を認識するアルゴリズムを使っている」と説明する。

 この“アルゴリズム”を具現化したものが「Free Space」と「Holistic Path Planning」だ。

 前者のFree Spaceは、前方の視界のなかで、走行可能な道の部分を“領域”として示すもの。隣接するの車線のクルマ、対向車線の自転車、交差点の横断歩道で左からの歩行者など、自車がこれから走行できる場所での対象物を除いた“実際に走行可能な領域”を特定するのだ。

 さらにこのFree Spaceの中で、これから進むべき方向を予測するのが、Holistic Path Planningと呼ぶ“先読み機能”だ。

 この最新システムを最初に量産化したのがテスラの「モデルS」だ。2015年10月から米国でサービスを開始し、日本でも2016年1月中旬に国土交通省から「自動車線変更の利用の許可」が下りたことでサービスの開始が決まった。

 日本でのサービス開始を受けて、テスラは在米の日本メディアを、カリフォルニア州フリーモント市の本社工場に招き、SUVの「モデルX」の製造工程の見学とともに、Mobileyeの最新技術を使った自動車線変更の体験試乗会を行った。

Mobileyeの技術により簡易自動運転を実現したテスラの「モデルS」 Mobileyeの技術により簡易自動運転を実現したテスラの「モデルS」

 この試乗会には筆者も参加したが、自動車線変更の際の「(クルマ側の)判断の思い切りの良さ」に驚いた。

 実は、モデルSには車両後方を検知するミリ波レーダーやアラウンドビューモニターは搭載されていない。車両の側面方向および後方に向けたセンサーは自動駐車用の超音波センサーだけで、その守備範囲は車体から2〜3m程度と短い。駐車時などにドライバーの死角に障害物がある場合に警告を出す「ブラインド・スポット・ウォーニング」が通知されるタイミングについては、ミリ波レーダーを搭載している量産車に比べてかなり遅いと感じた。

 このこともあってか、自動車線変更の試乗で助手席に同乗したテスラの技術者は、「基本的には最初に目視で後方確認をしてから、ウインカーを上げて自動車線変更を行って欲しい」と、運転席の筆者に対して注意を促した。

 「モデルS」はこの他、フロントバンパーの中央部分にミリ波レーダーを装備している。これら各種センサーからの情報を踏まえているものの、先ほど「思い切りの良さに驚いた」と述べた自動車線変更の判断については、Mobileyeのアルゴリズムを活用した単眼カメラによるFree SpaceとHolistic Path Planningによって行われているのだ。

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