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» 2016年01月13日 13時00分 公開

統計の食わず嫌いを直そう(その9)、昼休みにタダで統計分析をする方法山浦恒央の“くみこみ”な話(81)(3/3 ページ)

[山浦恒央 東海大学 大学院 組込み技術研究科 准教授(工学博士),MONOist]
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3. 例題2:ツールの導入評価

 例えば、ソフトウェア開発の品質改善をめざし、テストツールを導入したとします。テストツールの導入以前と導入以降で、テストフェーズでのバグ摘出件数に差が有るか判断したい場合です。

表.2 導入前後のバグ摘出件数
モジュール ツール導入前 導入後
A 5 6
B 6 8
C 3 4
D 9 8
E 1 2

 厳密には、テストに要した工数も比較しなければならないでしょうが、今回は割愛します。まず、仮説を以下のように設定します。

 ・帰無仮説:ツール導入の効果無し

 ・対立仮説:ツール導入の効果有り

 次に、上記の例題1で示した手順通り実施すると、以下の結果が出ます。

photo

 検定量が0.178となっており、検定量>0.05です。よって、新旧の開発プロセスに差がなかった、すなわち、ツール導入によるプロセス改善の効果無し(注4)という残念な結果になります。

(注4)厳密に分析する場合、「順序効果」を考慮する必要があります。順序効果とは被験者の実施する手順によって結果が変わることです。例題2の場合、ツール導入前の経験が導入後の結果に影響を与える可能性があります。よって、厳密には「ツール無→ツール有」と、「ツール有→ツール無」の2パターンを考慮する必要があります。

4. 終わりに

 今回は、平均値の差の検定の具体的なやり方を紹介しました。書籍を読むだけでは理解しにくいことも、ツールを使用すれば意外と簡単ということがお分かりいただけるでしょう。Excelの統計分析ツールは非常に強力です。しかも、(Excelを持っているなら)タダ。

 これを活用しないのは、東京大阪間の新幹線無料乗車パスがあるのに、歩いて東海道五十三次を2週間かけて旅するようなものです。100件程度のデータの統計的な分析なら、1時間もあれば可能です。まずは、やってみましょう(注5)。

(注5)データ数の多少や、対応有無の場合によって、検定手法を変更する必要があります。より詳しく知りたい方は参考文献に挙げた書籍をご参照ください。
【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

東海大学 大学院 組込み技術研究科 准教授(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科助教授、現在に至る。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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