次年度入社予定の新人に対し、E-learningで入社前教育を行いました。教育効果を評価するため、教育の前後でテストを実施し、結果を考察します(テストは100点満点。結果は表.1参照)。
表.1 E-learning前後のテストの点数 | ||
---|---|---|
社員No | 教育前(E-learning前) | 教育後(E-Learning後) |
1 | 50 | 54 |
2 | 84 | 89 |
3 | 78 | 84 |
4 | 61 | 77 |
5 | 94 | 91 |
6 | 99 | 100 |
7 | 45 | 56 |
8 | 73 | 78 |
9 | 38 | 55 |
10 | 80 | 78 |
「入社前のE-learningには効果があった」ことを統計的に証明したいので、それに沿った帰無仮説と対立仮説を設定します。
帰無仮説と対立仮説については、前回のコラムでも解説しましたが、「王様の耳はロバの耳」であることを統計的に証明したい場合、無にしたい仮説、あるいは、否定したい仮説が帰無仮説で、「王様の耳は国民と同じである」という仮説です。対立仮説は、採用したい仮説、すなわち、「王様の耳はロバと同じ」になります。
「入社前のE-learningには効果があった」ことを証明したい場合、帰無仮説と対立仮説は以下のように設定します。
・帰無仮説:入社前教育として、E-learningの効果無し
・対立仮説:入社前教育として、E-learningの効果有り
帰無仮説が無にならなかった場合、「入社前教育として、E-learningの効果無し」となり、教育手法を考えなおす必要があります。
データを整理・分析します。今回は、Excelの「分析ツール」内の「一対の標本による平均の検定」を使用します。よって、必要なデータは、E-learning実施前後のデータ(上記の表.1)があればOKです。
Excelでの操作手順は次のようになります。
(1)「データ分析」から「一対の標本による平均の検定」を選択し、「OK」をクリックします。
(2)データを挿入します。「変数1の入力範囲(1)」、「変数2の入力範囲(2)」に表.1のデータをそれぞれ入れ、「OK」を選択します。因みに、αを変更すると有意水準を変更できます(有意水準については、前回のコラムを参照。今回は5%なので0.05)。
(3)結果が出ます。
両側検定ですので(両側検定については前回のコラムを参照)、注目する部分は「検定量(P(T<=t)両側)」と、設定した「有意水準(α値)」です(今回のαの値は0.05です)。(t検定では、検定量はp値とも呼びます)なお、「(P(T<=t)両側)」の見方は以下の通りです。
「P(T<=t)両側」は0.022ですから、0.022 <= 0.05となり、前後に差があることがわかります。結果として、「入社前の教育として、E-learningは効果がある」と判定できそうです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.