2009年にリリースした「ネジザウルスGT」は、それまでのシリーズ累計を凌ぐ売れ行きとなった。シリーズ累計でも250万丁を超えて大ヒットになったどころか、場外ホームランとなった。
同社が目指す「世界一、ユーザーに愛される工具メーカー」への大きな一歩だった。
高崎社長は、ネジザウルスGTの爆発的な売れ行きを見て、「なぜ売れたのか?」を冷静に分析した。そして独自のMPDP理論を生み出した。MPDP理論については、高崎社長の著作『「ネジザウルス」の逆襲 累計250万丁の大ヒット工具は、なぜ売れ続けるのか』(日本実業出版社刊)に詳しい。
MPDP理論とは、マーケティング(M)、パテント(P)、デザイン(D)、プロモーション(P)の頭文字をとったものだ。「この4つのどれが欠けても、ヒット商品は生まれない」と高崎社長は力説する。20年間で800のアイテムを作ってきた中で、「あと1つ要素が足りない」という経験を何度もしているからだ。
ネジザウルスGTは、MPDPが全て備わっていた。だからこそ、大ヒットにつながったのだ。ネジザウルスGTの開発を例に、MPDP理論の詳細を1つ1つ見ていこう。
MPDPの中で、中小製造業が一番取り掛かりやすいのは、プロモーションだという。製造業には「いいモノを作れば売れる」という神話が根強い。それは過去の価値観だ。モノが氾濫している時代、品質がいいのは当然。製品の良さを顧客にいかに伝えるか? つまり、プロモーションが重要になる。
インターネットが普及したおかげで、低予算でさまざまな情報発信が可能になった。エンジニアも低予算でできることは、次々と挑戦してきたという。
例えばネジザウルスをゆるキャラ化して展開し、漫画も作った。恐竜がネジにかみつくCGは、社員が半年かけて製作したそうだ。出来がよかったから、後にデザイナーに依頼してクオリティをアップした。テーマソングも作って高崎社長と社員が歌う様子を動画サイトに公開するなど、楽しそうに取り組んでいる。
動画ではネジザウルスで瓶の蓋を開けたり、ペットボトルをつぶしたり、スプレー缶のガス抜きをしたりという思いがけない使い方も、コント仕立てで紹介している。これらの活用方法は、ユーザーから寄せられたアイデアだそうだ。ユーザーが製品のファンになっている傍証だろう。
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