Mentor Graphics(メンター・グラフィックス)は、自動車や航空機のE/E(電子/電気)システムとソフトウェアを統合的に設計開発できるシステムエンジニアリングツール「Capital Systems」を発表した。
Mentor Graphics(メンター・グラフィックス)は2015年12月4日、東京都内で会見を開き、自動車や航空機のE/E(電子/電気)システムとソフトウェアを統合的に設計開発できるシステムエンジニアリングツール「Capital Systems」を発表した。
メンターはワイヤーハーネス設計ツールを「Capital」ブランドで展開している。Capital Systemsは、このCapitalブランドの製品ではあるものの、ワイヤーハーネス設計ツールではない。会見に出席した同社Integrated Electrical Systems Divisionのゼネラルマネジャーを務めるMartin O’Brien氏は「従来のCapitalはEDS(Electrical Distribution System)という、車両内におけるE/Eシステムの物理的な配置/配線設計を行うものだった。Capital Systemsはその上流、機能の要件にひも付くソフトウェアやネットワークのアーキテクチャ、システム間をつなぐ論理接続の手法などを定義するプロセスを担う。従来にないタイプのツールだ」と語る。
Capital Systemsは、自動車や航空機の進化を担っているE/Eシステムとソフトウェアの開発について、従来よりも早期の開発プロセスでさまざまな設計を試せることが特徴だ。自動車で言えば、要件定義を行う自動車メーカーと、ECU(電子制御ユニット)やECU間をつなぐネットワーク、車載ソフトウェア、EDSなどを設計するサプライヤの間における情報のやりとりはMicrosoft Officeの「Excel」「PowerPoint」「Visio」などドキュメントベースになっている。この体制では、自動車メーカーが設計変更を行っても、サプライヤが早期に対応することは難しく、開発の遅延を生みやすい。
O’Brien氏は「特に自動車はADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の進化によって、E/Eシステムとソフトウェアの複雑化が急速に進んでいる。ドキュメントベースで情報共有する開発プロセスでは、この複雑化に対応できない。Capital Systemsであれば、自動車メーカー自身が設計変更による影響を見積もることができ、どのような対応をすればよいか分かるようになる。サプライヤとCapital Systemsのデータを共有すれば、ドキュメントベースの体制よりも効率のよい開発プロセスを構築できるはずだ」とメリットを強調する。
Capital Systemsは2つのツールから構成されている。1つは「Capital Systems Capture」で、車両のE/Eシステムを構成する機能要素とその接続をモデル化するツールになる。もう1つは、Capital Systems Captureで作成したモデルを、車両や航空機全体に論理接続としてマッピングする「Capital Systems Architect」である。このマッピングはほぼ自動で行え、ユーザーがマッピングのルールや制約を設けることもできる。
Capital Systemsの特徴は設計変更の影響を分かりやすく把握できる機能にある。Capital Systems Captureでは、作成したモデルについて何らかの要件変更に基づいて設計変更した場合、設計変更によって発生する不整合を知らせてくれる。Capital Systems Architectは、設計変更によって発生する、ECUのCPU利用率やメモリ利用率、ネットワーク負荷、EDSのコスト/重量/長さなどへの影響を視覚化して示すことができる。
Capital Systemsはメンターの他の設計開発ツールとシームレスに連携できることも特徴になっている、先述したEDSの設計に用いるCapitalの他、AUTOSAR準拠の車載ソフトウェア開発に用いる「Volcano」や、ECUの中核部品であるプリント配線板の設計に用いる「Xpedition」などだ。
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