ASICの市場が縮小する背景には「14/16nm世代を使うと開発費の10倍の売り上げが必要になる程、投資回収が難しい」(水野氏)という点がある。ASICは、要求仕様をカスタマイズするという意味では容易だが、回路を作り込むためのフォトマスクの開発費用でコストが増える。微細化によってフォトマスクのパターン作りが、半導体回路設計のコストの大半を占めるようになっているという。また、ASICは「FPGAと比較してデバイスを入手できるまでの期間が長く、ハードウェアの変更も難しい」(同氏)という短所がある。
汎用性の高いFPGAは、広義ではASSPに含めることができる。ただしFPGAはさまざまな用途向けにユーザーが回路構成やソフトウェアを設計してプログラムできるのに対し、ASSPは通信用、画像処理用などのように用途や回路構成がメーカーによって決められている。
ASSPやマイコンを選ぶデメリットは「同じ仕様の同じデバイスを使うと、競合と差をつける部分はソフトウェアしかなくなる。差別化の余地が小さくなり、競争優位性が損なわれる」(同氏)という点だ。納入先が求める技術を開発する上で「ベーシックなシステムが必要なら大手メーカーのASSPを買ってきて対応できるだろう。独自性のあるシステムが求められるなら、FPGAが適している」(同氏)と述べた。
水野氏はMicrosoft(マイクロソフト)が2015年2月に発表したディープラーニングに関する論文を基にFPGAの強みを紹介した。人工知能技術の1つであるディープラーニングは、コンピュータに高度な判断が求められる市街地などでの自動運転技術で必須になると言われている。「論文ではFPGAが電力性能比で優れていると示された。例えば、FPGAはNVIDIAの『Tesla』と比較すると性能は2分の1から4分の1にとどまるが、消費電力は10分の1と小さい。FPGAを2個使えばTeslaの5分の1の電力で同じ処理性能を出せるということだ。」(同氏)。
また、百度(Baidu)が実施した、Xilinx「Kintex-7」とNVIDIAのGPU「K10」、IntelのCPU「Xeon」の性能比較によると、GPUやCPUのサーバよりも低い消費電力を実現した。併せて、処理速度についても十分な水準を満たしていることを示したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.