FPGA大手のザイリンクスが記者向けに勉強会を実施し、先進運転支援システム(ADAS)でFPGAを使うメリットを解説した。車両や歩行者、白線などを認識する処理は、FPGAの得意分野だという。コストや性能の面からも、FPGAはADASで強みを発揮しそうだ。
自動車の電子制御が複雑化している。従来はアクチュエータを制御するシンプルなものだった。しかし、先進運転支援システム(ADAS)では、カメラなどのセンサーの入力から、車両や歩行者、白線などを検出してドライバーに伝達したりブレーキやステアリングを制御したりする必要がある。Xilinx(ザイリンクス)は2015年12月11日、東京都内で記者向けの勉強会を開き、複雑かつ高速な処理が求められるADASでFPGAを採用するメリットについて解説した。
ザイリンクス グローバルセールスアンドマーケット オートモーティブセグメントビジネス オートシステムアーキテクトの水野秀導氏は「自動車の従来の電子制御にはFPGAやGPUは必要なかった」とする。電子制御はエンジン、トランスミッション、ブレーキ、パワーステアリングなどアクチュエータの制御を意味していたからだ。「構成が決まっていてシンプルなフィードバックだったので、専用のマイコンやDSPでの制御が適していた」(同氏)。
一方、ADASでは2〜6個のカメラからの入力情報から障害物や白線、標識などを識別してドライバーに危険を知らせる必要がある。そのため、複数の処理(スレッド並列)や分割処理(データ並列)を行い、処理速度を向上することが課題となっているという。
そんな中、ザイリンクスはホンダ、Ford Motor(フォード)、Audi(アウディ)、マツダなど日米欧の自動車メーカーでFPGAの採用を増やしている。また、FPGAは「この10年で3倍に市場規模が拡大した成長分野」(ザイリンクス グローバルセールスアンドマーケット マーケティング部シニアマネージャーの神保直弘氏)だ。神保氏は「ASICの市場が縮小した分FPGAが伸長する」と見込む。FPGAにはどのようなメリットがあるのか。
演算処理を行う半導体の回路技術としてはCPUやGPU、DSP、そしてFPGAがある。これらにはそれぞれ向き不向きがある。
CPUとGPUは、まとまった量のデータに対して複雑な計算処理を行うのを得意とする。計算の繰り返しが多ければ多いほど有利だが、応答速度は遅い。これに対し、DSPは入力データに対するシンプルな計算処理に適しているが、複雑な計算が不得意だ。
これらに対してFPGAは並列処理で力を発揮する。「1つの計算処理を何人かで分担してこなすイメージだ。手分けして同時に計算するから速い」(神保氏)ためだ。4G/5Gでの通信や4K/8Kの画像処理など、大きいデータを低遅延で扱う用途に向いている。
ADASを想定すると「FPGAが画像処理を、CPUが運転の判断を担う組み合わせが強みを発揮する」(同氏)という。
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