キヤノンは、プライベートイベント「Canon EXPO 2015 Tokyo」において、網膜を視細胞レベルで確認できる「補償光学操作型レーザー検眼鏡(AO-SLO)」を展示した。天体観測に用いられてきた補償光学技術を応用することで、従来の検眼鏡の5〜10倍の分解能を実現できるという。
キヤノンは、プライベートイベント「Canon EXPO 2015 Tokyo」(2015年11月4〜6日、東京国際フォーラム)において、網膜を視細胞レベルで確認できる「補償光学操作型レーザー検眼鏡(AO-SLO)」を展示した。京都大学と共同開発を進めているもので、商用化時期は明らかにしていない。
同社は、眼科機器として、デジタル一眼カメラ「EOS」の技術を応用した眼底カメラや、網膜断層検査に用いる光干渉断層計(OCT)など製品化している。今回展示したAO-SLOは、現行製品をはるかに上回る細胞レベルでの状態を可視化する検査装置になる。
AO-SLOに用いられている補償光学(AO:Adaptive Optics)は、従来は天体観測に用いられてきた技術だ。天体の放つ光を地上の望遠鏡で撮影しようとすると、大気の揺らぎによってひずんでしまう。補償光学はこのひずみを除去して、鮮明な天体観測画像を得るために長年用いられてきた。「光が持っている情報を復元する技術だ」(同社の説明員)。
検眼鏡も、天体観測と同様に、眼底にある網膜までの間には水晶体などがあって画像がひずんでしまう。このひずみを補償光学によって鮮明にするのがAO-SLOだ。分解能は5μm程度で、従来の検眼鏡の5〜10倍に向上できている。これにより、網膜の視細胞、血管を流れる血流や血管壁を“見える化”できるという。
AO-SLOは眼の状態を確認する検眼鏡の以外に他の用途もある。「体の中で唯一体内を直接見られるのが眼底だ。血管の状態を直接観察することで、眼の病気以外に、高血圧症や動脈硬化などの影響も検査できるようになる可能性もある」(同説明員)。
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