「こんにちは。マイアミマーリンズのイチローです。えー……野球やってます。僕はですね、実は、クルマの運転全然うまくありません。でもクルマが大好きなんです。なので、本日この東京モーターショーにお招きいただいて、本当にうれしく思っています。実は章男社長とは何度かお会いする機会があって、お話をするたびに、なぜか共感できるところが多いなと勝手に感じていました」(イチロー氏)
「僕は毎年バッティングフォームを変えることにしています。たとえ首位打者を取ったり、誰よりもヒットを打ったとしても、次の年には変えてしまう。今よりも前に進むには、常に新しいチャレンジが必要だと信じているからです。その結果、前の年よりも、成績が下がったり、うまくいかないこともたくさんあります。むしろそのほうが多いのかもしれません」(同氏)
「でも僕はこう思うんです。成長するということは、真っすぐにそこに向かうことではないんじゃないかと。前進と後退を繰り返して、少しだけ前に進む。つまり、後退も成長に向けた大切なステップなんじゃないかと。TNGAという新しいクルマづくりを「プリウス」からやっていた。それを聞いたとき、トヨタが大きくバッティグフォームを変えてきたなと思いました。トヨタの首位打者ともいえるプリウスで大胆にフォームを変えてきた。世界は全く違いますが、やっぱり僕とどこか似ている気がしているんです」(同氏)
「グローバルに戦うということは本当に厳しいことです。新しいことにチャレンジしなければ生き抜くことはできない。僕はそんな思いでバッターボックスに立ち続けています。トヨタのチャレンジがどんなWOWを起こすのか注目しています。僕はクルマが本当に大好きです。クルマの運転はうまくありません。トヨタだけではなく、多くの自動車メーカーが思い切ったチャンレンジをして、クルマがもっともっと楽しくなることを願っています」(同氏)
このイチロー氏のスピーチの後、豊田氏は、「イチローさんと話していると、僕が思っていることを、彼がいつの間にか解説してくれてるんです。プレイをするフィールドは異なりますが、トヨタのクルマづくり、企業経営の姿勢も、こうありたいと思っています」と述べている。
実際にトヨタ自動車は、2014年度からは“意思ある踊り場”として、持続的成長への礎を築く経営方針を示している。新型「プリウス」から始まる、TNGA(Toyota New Global Architecture)の導入準備を含めて、「後退も成長に向けた大切なステップ」ということをイチロー氏のスピーチに託した形だ。
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