ソフトウェア開発と一口に言っても、PC向けと組み込み機器向けでは数多くの相違点があります。組み込みソフトウェアが重要な理由と合わせて組み込みソフトウェア開発の要点について解説します。
この連載ではこれから組み込み機器開発に携わる技術者・エンジニアを目指す方を対象に、組み込み機器開発の入門編として知っておくべき内容を広く説明します。第1回では「組み込み機器とは」について、第2回では「組み込みシステム開発」について、第3回では「組み込みシステム開発のこれまでとこれから」について説明しました。
第4回となる今回は組み込みシステム開発の中で行われる「組み込みソフトウェア開発」について説明します。組み込みソフトウェアは多くの組み込み機器に搭載され、非常に重要な役割を果たしています。
組み込みソフトウェアとはなんでしょう? 組み込みソフトウェアは組み込み機器上で動作するソフトウェアで、ドライバ、オペレーティングシステム、ミドルウェア、アプリケーションなどがそれにあたります。
組み込み機器は「特定用途向けに特化した、限定した機能を果たすことを目的とした機器」ですので、組み込みソフトウェアは、「特定用途向けに特化したハードウェアを制御し、必要となる機能を実現するためのプログラム」ということになります。
温度計の場合ならば温度センサー(温度計測用ハードウェア)から周期的に数値データを読み込み、数字表示装置(数字表示用ハードウェア)に数値データを設定する機能を持つプログラムが「組み込みソフトウェア」となるわけです。
連載の第2回でお伝えした通り、組み込み機器は小型化、機能の高度化・多様化、製品サイクルの短期化、低価格化が進んでいます。組み込み機器の製造メーカーは、組み込みソフトウェアを組み込み機器に搭載することでこれを実現しているのです。
では、みなさんがPCなどでよく利用するキーボードを例に見てみましょう。
キーボードは代表的な文字入力装置です。基本的に1文字に1つのキーが割り当てられています。そのキーの1つ1つが入力しやすい大きさ、配置となっているため、操作性の優れた入力装置なのです。
では、スマートフォンの登場とともに一気にメジャーになった入力機器であるタッチパネルを見てみましょう。
タッチパネルの文字入力は、画面に表示されるキーボードのキーの1つ1つに複数の文字を割り当てて利用します。複数キーボードの表示を切り替えて利用することも可能です。これにより従来までのキーボードの操作性を維持したまま、小型化と部品数の削減を実現しているのです。これはソフトウェアで作ったキーボード(ソフトウェアキーボード)だからこそ可能となったのです。
キーボードの例のようにハードウェアの機能の一部をソフトウェアで実現することは、小型化、低価格化を実現する有効な手段の1つです。また、組み込み機器に求められる機能の複雑化・高度化が進むことでハードウェアだけで組み込み機器に求められる機能を実現することが困難になり、現在ではさまざまな組み込み機器に組み込みソフトウェアが搭載されるようになっています。
次の章では、PC上のソフトウェア開発と比較しながら組み込みソフトウェア開発を説明していきましょう。
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