「H-IIAロケット29号機」公開(前編)――29号機で何が変わったのか見せてもらおうか、「H-IIA改」の性能とやらを(4/4 ページ)

» 2015年08月31日 17時00分 公開
[大塚実MONOist]
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海外製ロケットに対する勝算は

 これで、少なくともΔVについては、アリアン5に追いつく。今回、Telesatの衛星打ち上げを受注できたのは、この高度化の実現が大きな要因であったことは間違いない。

 三菱重工業の二村幸基氏(防衛・宇宙ドメイン技師長)は、「Telesatは商業衛星のオペレータとしてメジャーな事業者。この打ち上げが成功すれば、我々にとって大きな実績になる。高度化で衛星側の負担を軽減するロケットに仕上がるので、それをアピールして世界に売り込んでいきたい」と意気込む。

 ただその一方で、引き続き課題となっているのはコストの高さ。為替が円安に振れ、一時に比べ問題が軽減されたとは言え、いつまた円高に戻るか分からない。二村氏は「1円でも安くなるよう努力している」と説明するものの、H-IIAロケットのままでは限界がある。大幅なコストダウンは難しいのが現状だ。

photo 三菱重工業H-IIA/Bロケット打上執行責任者の二村幸基氏

 もし成功率が互角で、コストも同等ならば、衛星オペレータは、ロケットを乗り換えないだろう。使い慣れたロケットを次も選ぶだけだ。H-IIAが海外ロケットから顧客を奪うためには、打ち上げの成功を続けた上で、何かしらの+αが必要になる。

 「ロケット機体の仕上がり、打ち上げ設備の仕上がりが非常に良くなっていて、道具としての信頼度が非常に高いことが私たちのロケットの強み」と二村氏は見る。最近のH-IIAロケットは、天候以外の理由による打ち上げ延期が全く無い。96.4%という高い成功率に加え、このオンタイム打ち上げの多さを武器として、同社は世界に乗り出す構えだ。

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