トヨタ自動車は、レクサスブランドの広告キャンペーン映像「SLIDE」のために開発を進めていた「レクサスホバーボード」の全容を発表した。地面から浮くホバー走行には、超伝導現象を利用している。
トヨタ自動車は2015年8月5日、高級車ブランド・レクサスのグローバルブランド広告キャンペーン「AMAZING IN MOTION」の第4弾「SLIDE」のために開発を進めていた「レクサスホバーボード」の全容を発表した。同社は同年6月、YouTubeで、開発中のレクサスホバーボードの映像を公開していた。
ホバーボードは、スケートボードの車輪の代わりに、何らかの手法によって浮上してホバー走行する“ボード”だ。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」で登場したことで広く知られている。
レクサスホバーボードは、超伝導体が極低温に維持されて超伝導体状態になり、外部から磁力を加えられたときに発生するマイスナー効果とピン止め効果を利用してホバー走行を実現している。ホバーボードの内部には、液体窒素の沸点よりも超伝導転移温度が高い高温超伝導体を組み込んでいる。この高温超伝導体は、液体窒素を使って−197℃まで冷却できる低温保持装置によって超伝導状態が維持されている。
外部からの磁力に当たるのは永久磁石を埋め込んだレールである。つまりレクサスホバーボードは、このレール上でしかホバー走行することができない。
開発は、ドイツのドレスデンを拠点に磁気浮上技術を手掛けるIFW Dresdenとevicoの科学者チームが担当。18カ月かけて開発を完了したという。evicoのCEOを務めるOliver de Hass(オリバー・デ・ハス)氏は、「レールの磁場がホバーボードの超伝導体の中に『凍結』されることで、ボードとレールの間に一定の距離が保持され、浮くことができる。この力は、ホバーボード上で人が立ったりジャンプしたりできるほど強いものだ」と語る。
なお、レクサスホバーボードの重量は11.5kg。16個の超伝導体を内部に組み込んだ低温保持装置を前方に1つ、後方に1つ備えている。レクサスブランドの車両の象徴となっている、フロントフェイスの「スピンドルグリル」が前面と後面に反映されている。
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