結局は現場が自発的に動かなければ、良い改善はできないと思います。ですから、トヨタ生産方式では、「人を生かすこと」に重きをおいています。人を生かすとは、人が持っている「考える能力」を尊重することであり、働く人に「考える余地」を与えることです。
工場のラインに組み込まれると、人も機械の一部のようにもスケジュールが与えられ、生産ラインの一部になります。しかし、これが単なる機械の一部であればニンベンの付かない「自動化」なのでしょうが、トヨタ生産方式がニンベンの付く「自働化」としているのは、「機械」ではなく「人」だということを重視したいという意味もあるのだと思います。人の知恵や可能性をいかに引き出し活用するのかがトヨタ生産方式の本質であり、そのためには人を育てることが大切となってくるわけです。
「誰かがやる」ではなく「自らやる」という職場風土をつくり、そうして育った人たちがまた後継者に技術を伝承していくのです。単なる仕組み化とは大きな違いがそこにあると思います。
では、どうやって人を育てていくのでしょうか。最後に元帥海軍大将である山本五十六長官の残した、有名な格言を引用して本連載を終えたいと思います。トヨタ生産方式を導入してもうまいく企業ばかりではないというのは、トヨタ生産方式の本質がここにあるからなのではないでしょうか。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
「苦しいこともあるだろう 言い度いこともあるだろう 不満なこともあるだろう 腹の立つこともあるだろう 泣き度いこともあるだろう これらをじっとこらえてゆくのが 男の修行である」
※Wikipediaより2015年5月11日に引用
愛知県一宮市出身。中小企業診断士として、東京商工会議所を中心に、日々中小企業の経営改善現場で活躍。特に無料ツールを活用した、ITインフラ構築や販売促進支援と創業時などの思いを事業計画書という形に作り上げる支援に定評がある。また、著書に「ガンダムに学ぶ経営学」「ドラクエができれば経営がわかる」がある。
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