「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給できれば、「ムダ、ムラ、ムリ」がなくなります。つまりここでも、本連載の第1回で説明した「ムダ、ムラ、ムリ」の排除が重要となるわけです。これを実現しているのが、「カンバン方式」というトヨタ独特の管理方式です(図3)。以下に概念図を示しますが、詳細はトヨタのHPでご確認ください。
トヨタ生産方式の素晴らしさは国内にとどまりません。米国ではトヨタ生産方式を研究し、この生産方式を誰でも取り組めるような形にした「リーン生産方式(Lean Manufacturing)」が生み出されています。
トヨタ生産方式では、主に現場が主体となり全社的な業務改善活動を行っていきます。つまり、ボトムアップ的(現場層から経営層へ向けて)に改善を行っていくのが特徴的ですが、リーン生産方式ではこれとは逆にトップダウン的(経営層から現場層へ向けて)な指示で改善を進めていくのが特徴です。そのため、現場が無理なく取り組めるように、さまざまな仕組みを体系化させたシステムとして構築されています。
ではボトムアップ型とトップダウン型はどちらが優れているのでしょうか。これにはさまざまな意見があると思います。コンピュータの世界で言う、「集中型がいいのか分散型がいいのか」と同じことです。この議論は「やじろべえ」のように、時代とともに右に振れたり左に振れたりするのだと思います。少し話がずれますが、オンラインRPGが動いているサーバは物理的には分散管理されているものの、仮想的には集中しているといったことと似ているかもしれません。
話を元に戻すと、トヨタ生産方式が上手くいったのは、やはり現場の人たちが自発的に考えて動けるという、そういう職場風土があったからなのではないかと思うのです。無理に「改善しろ!」といっても現場から良い提案は上がってこないと思います。だから、リーン生産方式では、改善を現場の自主性に求めるのではなく、仕組み化されたトップダウン方式で、ある意味「やらせる」のだと思います。
私の以前の職場は外資系のメーカーでしたが、そこで印象的だったのは米国本社の人たちが来日して、日本人に対してリーン生産方式とトヨタ生産方式の「KAIZEN」の話を英語でしていたことです。トヨタ生産方式を丁寧に英語で説明されましたが、「KAIZEN」といわれるよりも「改善」と言ってくれたほうが私にはとても分かりやすいのに、なぜか逆輸入されていてものすごい違和感を覚えました。そして、「自発的な取り組み」というよりも「やらされている感」の方が強かった印象があります。無理にRPGをやらされても面白く無いのと同じです。
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