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» 2015年05月21日 10時00分 公開

カーエアコンの冷房はなぜ冷えるのか(後編)いまさら聞けない 電装部品入門(19)(3/4 ページ)

エキスパンションバルブ

 コンデンサー(レシーバタンク&ドライヤー)を通って出てくる液状冷媒はエキスパンションバルブに送られます。

エキスパンションバルブ エキスパンションバルブ

 エキスパンションバルブでは、冷媒が通過するパイプの径が急激に狭くなります。通路が狭いので循環の妨げになりますが、圧力で強制的に押し出されるので、液状冷媒が霧状に噴霧される状態になります。この霧状冷媒は、次工程であるエバポレーターに噴霧されます。

 エバポレーター内の冷媒の気化状態に合わせて噴霧する冷媒量を調整するため、エキスパンションバルブには噴霧量を調整するためのダイヤフラムが設置されています。

エバポレーター

 エバポレーターは、エキスパンションバルブで噴霧した冷媒が気化する場所です。

 こちらもラジエーターのような見た目をしています。これはもちろん、霧状冷媒が気化しやすいように表面積を増やすためです。ブロアファンによって送られる空気は、エバポレーターのフィンに触れながら通過するように設計されています。

エバポレーター エバポレーター

 この空気がフィンに触れると、エバポレーター内部の霧状冷媒は強制的に熱せられることになります。すると冷媒は蒸発(気化)しますので、周囲から気化熱を奪います。周囲というのは、もちろんエバポレーターを通過している空気ですよね。

 結果的に冷風となった空気が、エアコンの吹き出し口から出て、車室内を循環します(冷房)。

 空気がエバポレーターを通過する際は急激に冷やされます。空気には水蒸気が含まれていますが、飽和水蒸気量というのは温度が下がれば減少しますよね。つまり、エバポレーターで冷やされた空気は、もともと含んでいた水蒸気を気体として保つことができなくなります。そして、気体の姿を保てなくなった水蒸気は、エバポレーター通過中〜通過後にかけて水滴になります。

 冷房を使用中の自動車(家庭用エアコンも同様です)から、ポタポタと垂れてくる水の正体は、このタイミングで生じた水滴です(除湿)。冷房を使っているとのどが乾く、湿気で曇ってしまったフロントガラスにデフロスターを使用すると曇りが取れる。これらはエバポレーターを通過する際に、水蒸気が大量に取り除かれた空気を送風しているからです。

 参考までに、霧状冷媒が気化する際に周辺からエネルギーを奪うのと同じように、水蒸気(気体)が水(液体)に変わる際も周辺からエネルギーを奪います。この時に奪うエネルギーは冷媒の蒸発エネルギーなので、空気に含まれる水蒸気が多い、つまり湿度が高い時は冷房能力が下がってしまいます。

 最近では当たり前になってきたアイドリングストップ機構ですが、冷房使用時はコンプレッサーの動力であるエンジンが停止しているため、冷媒を気化する冷凍サイクルを循環させられません。キンキンに冷えたエバポレーターが蓄えている冷却力で冷風にすることはできますが、これは本当に非常に限られた時間だけです。

 冷風を出せなくなった時点で車室内の快適性は著しく損なわれます。そこで、不本意ながらアイドリングストップを中止してエンジンを始動し、再度エアコンから冷風が出るようにすることになります。

 こういったことが起こらないよう、エバポレーター内部に蓄冷剤を組み込んでおき、赤信号で停車している間などアイドリングストップ機構が働いている間に冷風を出し続けられるような工夫を施した新型エバポレーターが登場しています。

蓄冷式エバポレーターの構造 蓄冷式エバポレーターの構造 出典:デンソー

 この新型エバポレーターによって、夏場でもアイドリングストップを長時間活用できるので、実用燃費の向上に大きく寄与します。

 余談になりますが、エバポレーターには外気を含めて大量の空気が送り込まれます。このため、エバポレーターのフィンにはちりやほこりが堆積しやすいのです。堆積したちりやほこりは、冷房によって発生する水分をたっぷりと含んだ状態になります。その状態でエンジンを停止して駐車することは、換気が悪く光も当たらない環境=カビが発生しやすい環境に置かれることを意味します。もちろん車室内でタバコを吸う方であれば、たばこから出るヤニも大量に堆積することになります。

 これらのちりやほこり、カビ、ヤニは、エアコン使用時の悪臭の根源になります。困ったことに、一度エバポレーターに付着してしまうと並大抵のことでは排除することができません。

 これらの問題を完全に解決できているわけではありませんが、大きな改善策になったのがエアコンフィルターです(エアコンフィルターに関しては、次回取り上げる「ブロアユニット」の説明時に詳しくご紹介します)。

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