モバイル事業の構造改革が終わり、黒字が出る体質になれば、ソニーの構造改革はひと段落し、安定的に収益が出る体制になりそうだが、ここにきて新たな課題が浮上してきている。
その1つが為替だ。ソニーでは、円高対策や海外移転の進展などにより、輸出型の日本企業と異なり、円安が営業損益面でマイナスとなる体制になっている。2014年度までの為替感応度では、米ドルが1円分円安になった場合は、営業損益は30億円のマイナス効果、ユーロでは60億円のプラス効果がある計算だった。しかし、2015年度からは、米ドルに連動する新興国通過の影響度を除き、米ドルのコストを厳密に評価するようにしたことから、米ドルが1円円安になると70億円のマイナス効果、ユーロでは55億円のプラス効果という指標に変更したという。
2014年度の実績レートでは、1ドルが109.9円、1ユーロが138.8円としていたが、2015年度見通しでは1ドル120円前後、1ユーロ125円前後としており、この為替差損で営業損益に対し、1500億円のマイナス効果が生まれているという。
吉田氏は「為替については短期間に大きく動いた場合は影響度は避けられない。対策に奇策はなく、基本的にはコスト、数量、プライスの3つの組み合わせで対応していくしかない」と話している。
一方で目下好調なデバイス事業についてもCMOSセンサーへの依存度が高まり過ぎる懸念が生まれている。2014年度(セグメント変更後)のデバイス事業の売上高は9271億円、営業利益は890億円となった。デバイス事業で売上高の大きな製品群としては、CMOSセンサーをはじめとしたイメージセンサー事業と、リチウムイオン電池などのバッテリー事業がある。ただバッテリー事業については「2013年度は赤字だったが2014年度は黒字転換することができた」としており実質的に大きな利益は生み出していない。つまり、イメージセンサー事業が一手に大きな営業利益を稼ぎ出しているという状況になる。
この依存度は2015年度もさらに強まり、デバイス事業は1兆800億円、営業利益は1210億円を目指している。2015年度はソニーの業績も好転し営業利益は全社で3200億円となる見込みだが、その中でも最大の営業利益を稼ぎ出すのがデバイス事業だということになる。
同社のイメージセンサーはメインがスマートフォン向けでこの状況は「2017年度まで変わらないだろう」(吉田氏)としている。車載向けなどにも取り組んでいるが、自動車に搭載される時期が早くても3〜5年先になるため、次期の中期計画でまとまった成果を残せるかどうかは微妙な状況だ。
吉田氏は「イメージセンサーについては、微細、裏面、積層の3つのポイントでグローバルでの優位性を維持できている。得意とする積層型センサーは、アナログに近い貼り合わせ技術が必要で、通常の半導体ビジネスに見られるようなシリコンサイクルの影響は受けにくい。2017年度までの中期計画期間中は技術的な優位性を保てる」と話している。また「積層型はロジック部分は外注、センサー部分は内製という形で生産してきたが、センサー部分も一部外注を取り入れるようにし、リスクを軽減する」(吉田氏)としている。
ただ、スマートフォンは変化が激しい市場だけに、技術的な優位性を保ちつつも、どこでその状況がひっくり返されるか分からない。ソニーの2015〜2017年度の中期計画では、実質的に利益のかなりの部分をスマートフォン向けCMOSセンサーで支える構造となっている。この柱が揺らぐようなことになれば、再度抜本的な構造改革へと陥る可能性も否定できない。
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