ソニーは2015年3月期(2014年度)第3四半期(2014年10〜12月)の決算見通しを発表し回復基調にある現状を示した。断続的に続いた構造改革の終わりが見えつつある中、今後の注目を集めているのが“止血”後の世界だ。
ソニーは2015年2月4日、2015年3月期(2014年度)第3四半期(10〜12月期)の決算を発表した。構造改革の効果もあり、課題事業であったテレビ事業の黒字基調が定着した他、CMOSセンサーが好調を続けるデバイス事業、PS4が好調なゲーム関連事業などがけん引し、前年同期に比べて業績が大きく改善。通期目標も上方修正を行うなど、回復への道筋が見えつつある状況を示した(関連記事:ソニー、構造改革の打ち止めなるか!? テレビ事業が11年半ぶりの2四半期連続黒字)。
なお、ソニーの今回の決算は、ソニーの映画関連の連結子会社であるSony Pictures Entertainment(SPE)に対するサイバー攻撃の影響によりSPEの決算業務が完了しなかったため、確定値としての発表ではない。サイバー攻撃が業績に与える影響値を見込みで算出した「見込み値」としての発表となっている。
経営再建中のソニーでは2014年度を「構造改革をやり抜く1年」と位置付け、本社と海外販社の再編など、さまざまな再建施策に取り組んできた。新たに業績が悪化したスマートフォンを中心としたモバイル事業については2015年度(2016年3月期)に構造改革を実施するが、その他の事業については徐々に成果が見えつつある。
ソニーの第3四半期の業績は、売上高が前年同期比6.1%増の2兆5578億円、営業利益は同894億円増の1783億円、税引前利益は同764億円増の1647億円、当期純利益は同626億円増の890億円、という結果となった。また、第3四半期までの9カ月累計(2014年4〜12月)で見ると、売上高は同6.3%増の6兆2692億円、営業利益は同242億円増の1625億円、税引き前利益は同44億円増の1432億円、当期純損益は同300億円減となる201億円の赤字となった。
テレビ事業やゲーム事業など、課題事業については黒字体質が徐々に定着しつつある他、イメージセンサーが好調なデバイス事業は、売上高、利益の両面で高い貢献度を示し、回復基調を印象付けている。
回復が進んだ要因として、ソニー 代表執行役 EVP兼CFOの吉田憲一郎氏は「2013年12月から『構造改革をやり切る』として取り組みを進めてきた成果が着実に出ている。今期の改善の3割程度はこの構造改革の成果によるものだ。また、PC事業の売却により、まとまった事業体そのものから手を引くことがあり得るということになり、社員の意識が変わった点も要因としてある。一方、社内では『アカウンタビリティ(Accountability:説明責任)』を問う考え方が浸透してきたということも大きい」と語る。
これらの結果を受けて、2014年度の通期業績予想についても上方修正を実施。2014年10月発表時と比較して、売上高は前回予想比2000億円増の8兆円、営業損益は400億円の赤字見込みだったのに対し200億円の黒字に転換。その他、税引前損益は同450億円改善し50億円の赤字、純損益は同600億円改善し1700億円の赤字、という見通しに変更している。ただ、この状況となってもソニーは慎重な姿勢だ。吉田氏は「第4四半期に赤字が出る体質が染みついており、慎重に取り組んでいく必要がある」と語る。
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