実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第32回は、前回説明した損失について計算する「損失の解析」について取り上げる。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2013年11月号の記事を転載しています。
一般に、導体の表皮効果は周波数の高い信号は導体の表面、表皮深さdだけに電流が流れるとして、抵抗を計算します(図1)。
しかし実際には、表皮深さだけの表面に電流が流れるのではなく、導体表面から内部に行くに従って徐々に電流が流れなくなり、その抵抗の値が表皮深さだけに電流が流れる場合に等しくなるというものです(図2)。
表皮深さdの定義は電流密度が表面の1/e≒0.37(e:自然対数の底≒2.7)になる深さのことです(図3)。つまり、表皮深さより深いところにもある程度の電流は流れています。
基板配線に使用する銅箔の表面には数μmの凹凸があります(図4)。
表皮深さがこの銅箔表面の凹凸よりも十分深ければこの銅箔表面の凹凸は問題ありません(図5)。
しかし、信号が高速になり、表皮深さが凹凸に近い値になると、この凹凸が銅箔の抵抗値に大きな影響を及ぼすようになります。
この影響は、凹凸の大きさや形状、表皮深さなどの関係で変化します。
凹凸が大きく、鈍角の場合、電流は凹凸に沿って流れます(図6)。
このとき電流は直線距離よりも長い処理を進むため、電流経路の長さが長くなった分、抵抗も遅延も増加します。
導体の表面が瘤状になっている場合、電流は瘤状の表面に沿って流れるか、抵抗値の大きな導体内部をショートカットして流れるかは、どちらの抵抗値が小さいかで決まります(図7)。
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