10歩も35歩も標準偏差の範囲を外れているので「普通ではない」ということですが、どれくらい普通じゃないのかは分かりません。そこで、標準偏差から「いくつ分」離れているのかをみる必要が出てきます。そうすると10歩で敵に遭遇した時は、標準偏差「5」の2倍分の開き(10歩は平均値20歩から平均偏差5の2倍の10歩の開き)があります。35歩で遭遇した場合は、3倍の開き(35歩は平均値20歩から平均偏差5の3倍の15歩の開き)があります。標準偏差は通常「σ(シグマ)」で表示されるため、3倍の開きがあるというのは「3σ(シグマ)離れている」ということになります。
では、その開き具合は「どの程度普通じゃないか」ということですが、一般的に平均値から±1σ分の範囲に入るデータの割合が7割といわれています。±2σとなるとその範囲に入るデータの割合は約95%、逆にその範囲を超えるデータの割合は、その両側(両端)の値を合わせて約5%(片側の場合2.5%)、±3σとなるとその範囲に入るデータの割合は約99.7%、その範囲を超えるデータの割合は、両側合わせて約0.3%となり、ほとんどなくなるそうです。難しい計算は割愛しますが、どの場合でもこうなるそうです(図1)。
先ほどの敵キャラ遭遇率から考えると、グラフの左側の10歩で敵に遭遇する確率は約2.5%であるというくらい「普通じゃなかった」わけです。もう一方の35歩で遭遇する確率はほとんどないくらいに「普通じゃない」ということが分かるわけです※)。
※)歩数の例や標準偏差の数値は計算した結果ではなく、あくまでも説明上のものです。また実際のRPGのものとは異なります。
さて、製造現場では不良率を少なくし、不良率の発生確率を±3σ(シグマ)に抑えようという取り組みが行われてきました。プラス側の3σとマイナス側の3σを合わせて6σの範囲で良品を生産しようというものです。ここから「シックスシグマ」ということがいわれるようになりました。このシックスシグマの範囲で生産した場合の不良率がどれくらいかというと「100万個製造したうち3〜4個の不良品が発生」※)というレベルです。
※)厳密にはシックスシグマで主張する確率と統計学の6シグマでは差異があります
それではシックスシグマを達成すると、どんなメリットがあるのでしょうか。ある事例では、シックスシグマを実現している製造業において、不具合発生による追加コストの割合は売上高の1%以下ですが、4シグマの製造業では25%になったということが紹介されていました。つまり、製品品質のバラツキを極端に抑えることは利益の向上につながるわけです。
しかし、ただスローガンとして掲げただけではシックスシグマは達成できません。その達成に向けた取り組みプロセスをまとめたものが「MAIC」といわれるものです。このプロセスを基に各業務を全体最適化していくことにこそ、シックスシグマの意味があるのです。
シックスシグマの達成プロセスを可視化したMAICは、以下の4つのことを示します。
※)出典:シックスシグマ 品質立国日本の復活の経営手法(ダイヤモンド社)
製造現場では、このシックスシグマだけではなくさまざまな確率・統計手法が利用されています。
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