敵キャラ遭遇確率と不具合発生確率RPGで理解する生産管理(3)(2/4 ページ)

» 2015年03月27日 09時00分 公開
[山口亨/UTAGE総研 代表取締役,MONOist]

不具合発生確率とは?

 製造現場では特に「品質管理」の観点から「確率」や「統計」はよく利用されています。例えば、生産ライン上で作られた製品全数に対して品質検査を行い、生産数に対していくつ不具合が見つかったかということは統計の話となります。仮に100万個製造したうち、6210個の不良が発生していた場合、不良率は0.621%となります。しかし、これは良い数字なのでしょうか、悪い数字なのでしょうか。この場合、バラツキの度合を考えなければ、良いか悪いかは判断できません。

正規分布を考える

 例えば、先ほどの不良品の話は「重さ10gの商品に対して、プラスマイナス0.1gまでは良品である」という条件だと仮定します。100万個のデータを0.01g単位で集計したとすると、9.89gの製品がいくつあり、9.90gのものがいくつあるというように集計していきます。その結果をそれぞれ見た場合には、恐らく10.00g周辺(平均値と仮定)が最も多く、その前後が徐々に少なくなっていくという「正規分布」の状態になっているはずです。グラフで描くと富士山の様に真ん中が一番高く、裾野にいくにつれて広がっているイメージです。

 データの分布が、平均値を頂点とした左右対称の山形といわれるものが正規分布です。確率論・統計学では「中心極限定理」というものがあり「母集団の分布がどんな分布であっても、その誤差はサンプルのサイズを大きくしたとき近似的に正規分布に従う」ということですから、多くの検査データはこのような正規分布になるそうです。

標準偏差を考える

 皆さんも平均値というのはよくご存じだと思いますが、「標準偏差」というのはどうでしょうか。先ほどの不良品についても平均値があり、その平均値を中心に前後にデータが「分散」していることはご理解いただけたと思います。平均値を中心に「バラツキ」があるといえばよいでしょうか。確率を考えるときは、この「バラツキ」の度合がどれくらいで、どの程度の広さで分散しているのかを考えなければなりません。

 標準偏差とは「数値ごとに、平均値との差がどれくらいあるのか算出(これを偏差という)し、各数値を二乗平均したもの」です。「平均値からの離れ具合を平均したもの」と理解して頂ければよいでしょう。細かい計算の説明はしませんが、この標準偏差を導くことで、データがどの程度ばらついているかが分かるのです。

 例えば、RPGで草原を歩いていた時、平均して20歩で敵に遭遇したとすると、10歩で遭遇することもあれば、35歩で遭遇することもあるわけです。ここでも、平均値を中心にバラツキがあるわけですが、ここで標準偏差を求め、それが仮に「5」だとした場合には、平均値の20歩を前後に、大体5歩程度(15〜25歩の間)に散らばっていることが分かるのです。そうすると、10歩も35歩も標準偏差の範囲を外れているので、「普通ではない」ということが分かるのではないでしょうか。

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