しかし、そこまで市民権を得たハイブリッドだからこそ、強烈な需要が存在するニッチなマーケットがあるのです。
2014年、新しいレクサスのフラッグシップモデルとして登場したスポーツクーペ「レクサスRC」。欧州のどのメーカーにも再現できない有機的で肉感的なボディラインを持ち、「レクサスIS」からスタートした独立型のクリアランスランプが、一度でも見たら忘れない存在感を放っています。
このレクサスRCには、排気量3.5lV6エンジン×8速ATの「RC350」と、同2.5l直4エンジンにTHS-IIを組み合わせた「RC300h」があります。なんとこのRC300hは日本専用モデル。グローバルには展開しません。
既にお話ししてきた通り、トヨタやレクサスといえばハイブリッドと考える向きは絶対に存在するのに、どうして日本専用モデルにしたのか。
答えは簡単、日本でしか売れないからだとか。ちょっとビックリしませんか?
実は北米や欧州では、ガソリンハイブリッドへの優遇が日本ほど明確になく、エンジンだけのクルマを買うよりも価格の高いハイブリッド車をわざわざ買うメリットが感じられにくいのです。
国土が広く航続距離も長いことから、ストップ&ゴーでハイブリッドの燃費への貢献を感じやすい日本に比べ、重量とそれに伴うハンドリングの重さなど、ネガティブな面が目に付いてしまうことも。ですからつまり、売れないのだそうです。
特にレクサス人気の高いアメリカは、車体価格に対しての「生涯燃費=トータルコスト」を非常に繊細に気にするんだそうで、散々比べて計算した結果、ハイブリッドよりもガソリンエンジンを選ぶ、という人が多いとか。
対して日本は、生涯にどれくらい燃料を使うかというよりも、ハイブリッド車というグリーンでクリーンなイメージで選択する人が多いのではないでしょうか。
自動車販売店を経営している知人が何人かいますが、レクサスRCの先行販売が始まったとき、900台中600台の注文がハイブリッドのRC300hで占められたと言います。ちなみに、それよりもさらに小さい、コンパクトセダンのレクサスISが発売された時も、当初はディーラーによっては注文の9割がハイブリッドモデルで占められていたとか。
これを考察するに、ハイブリッドは多分に世間様の目からの隠れみのにもなり得ているようです。つまり、スポーツカーやちょっとワルそうなスポーツセダンでも、とりあえずハイブリッドと書いてあれば世間様に顔向けができる、対外的にメンツが保てる、という感じ。
とくに感情論が重要視される日本のご近所づきあいにおいては、実燃費よりもメンツが大事という図式がガッチリと成立し、そしてそれを陰ながら支えているのがハイブリッドシステム……と考えると、なんだか時代の最先端みたいなイメージのある技術だって、親しみを感じてしまうから不思議です。
とはいえ隣の家のガレージにレクサスRCなんて入っていたら、ソレがV6でもハイブリッドでも、だいぶ“儲かってる感”は拭いきれないんじゃないの? と、庶民の私は思うんですけども。
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