1日目は、まずハッカソンの説明が行われた。IAMASとローランドDGによる共同研究に基づくものであり、「Makerとメーカーにとってよりよい世界になっていくためのヒントが得られる」ことがゴールになるというものだ。そして、Arduinoを使ったSRM-20の接続機能やMaker Faire Tokyo 2014で披露されたIAMASの事例を紹介した後、参加者を3つのチームに分けてアイデアスケッチへ。なおこれら3チームには、ローランドDGの技術者も1人加わり、協力してハッカソンに取り組んだ。
ハッカソンのアイデアスケッチには、デザインチャレンジのテーマが必要だ。今回のテーマは「デジタル工作機械のある生活の楽しさをもっと広めるにはどうすればいいか?」。約2時間かけて各チームから数十個のアイデアが出され、それらの中からディスカッションを経て制作するものを1つ選んで1日目の作業は終了した。
2日目は、SRM-20、Arduinoと拡張ボードであるシールド、電子工作用の部品などを使って選んだアイデアを実現する「制作」に当てられた。6時間以上の作業の後、制作の成果が披露されたので、以下に紹介しよう。
Aチームが制作したのは「手相プリンタ」。SRM-20の内部に設置したUSBカメラで手のひらを撮影して手相を判断した上で、加工部の工具に替えて装着した筆ペンで手相を書き加えて「自分の未来を変える」というコンセプトの装置だ。アイデアスケッチの段階では、USBカメラを使った自動占い機だったが、そこからさらに手相を書き加えるという形に進化した。実際に制作したものは、希望の婚期を選んで結婚線を書き換えるという機能になっていた。
Bチームは「Chocofab」と「ぐるぐる46」を制作した。Chocofabは、タッチパネルを使って描いた文字や模様をチョコレートに書き込める装置。デジタル音痴のお菓子職人に使ってもらい、チョコレートへの刻印を簡単にやってもらおうというコンセプトになっている。一方のぐるぐる46は、SRM-20の加工部の位置決めを手動のロータリースイッチで行える、「面倒だった位置合わせも楽しくなる。おじいちゃんでも簡単」なインタフェースだ。
Cチームの「やよいちゃんごめんね」は、ペンの動きに追従して加工部を動かすというインタフェースである。もともとは、SRM-20が「切削版のFAX」になるというコンセプトが前提にあり、「けんかした彼女に謝るため手書きのメッセージを加工対象に彫り込んで送ろう」というところからネーミングされた。
東京クリエイティブセンター内で使われていたディスプレイ用の箱の内部にカメラを設置し、ペン尻に付けた緑色のテープを認識して2次元の位置情報を取得し、SRM-20の加工部を移動させている。
開催に協力したIAMASの小林氏は、「工作機械をテーマにしたハッカソンは珍しい。開発側でありローランドDGの技術者も参加するなど、面白いイベントになったのではないかと思う。この延長線上には、Arduinoの接続機能を使った『monoFabのカスタマイズ職人』という仕事も生まれてくるかもしれない」と語る。
ローランドDGも「ユーザー参加型モノづくりの第1歩を踏み出せた」と手応えを感じており、今後もSRM-20のArduino接続機能を活用していきたい考え。同社の技術者からは、「Bチームのぐるぐる46のアイデアは、今すぐにでも役立てられそう」という意見も出ていた。
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