ローランド ディー. ジー.は、新シリーズ「monoFab(モノファブ)」のラインアップとして、光造形方式の小型3Dプリンタ「ARM-10」と小型切削加工機「SRM-20」の2機種を世界同時発売すると発表した。
ローランド ディー. ジー.(以下、ローランドDG)は2014年9月3日、光造形方式の小型3Dプリンタ「ARM-10」と小型切削加工機「SRM-20」の2機種を世界同時発売すると発表した。両機種は、かねてより製品化が発表されていたもので、同年6月に開催された「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS2014)」において、稼働モデルが参考出品されて大きな話題となった(関連記事:ローランドDGが小型3Dプリンタをお披露目、競争過熱の中で勝算は?)。
今回の発表に併せ、同社はデスクトップ上での新たな“デジタルものづくり”の在り方を提案するための新シリーズ「monoFab(モノファブ)」を立ち上げ、両機種をその最初の製品ラインアップとして位置付けている。販売価格は、ARM-10が68万円(税別)、SRM-20が48万円(同)である。それぞれ発売後1年間で1000台の販売目標を掲げている。
同社は、昨今のデジタルものづくりの変革を受け、これまでの切削加工機を中心とした“机上でのものづくり=Desktop Fabrication”のコンセプトを再定義。「人間の自由な発想を制限することなく、いかに迅速にイメージを形にするかを追求すると、加工方式を切削に限定すべきではない。古来より人間は、土を練って積み重ねたり、木や鋼を削ったりして生活に便利なものを生み出してきた。われわれは、昨今のものづくりムーブメントの中で、削る=切削、盛る=積層というものづくりの基本となる2つに、ものづくりを楽しむ“Fab”のコンセプトを加えることで、3D事業の新たなスタートを切り、次世代のデジタルものづくりを提案したい」(同社)という。
また、デスクトップサイズで切削と積層の両ツールを展開するメーカーは世界的に例がなく、「このmonoFabシリーズが、新たな価値創造を提案する当社の最大の強みとなるだろう」(同社)という。ユーザーは両機種を利用することで、ものづくりの着想段階から生産工程までのワークフロー内で、各工程の要求や状況に応じた最適な加工方式を選択できるようになり、イノベーティブなものづくりを支援するという。同社は、monoFabシリーズを通じて、未来のDesktop Fabricationを実現し、新たなデジタルものづくりの在り方を提案したい考えだ。
ARM-10は、光造形法(プロジェクタによる面露光方式)を採用した同社初の3Dプリンタ。外形寸法は430×365×450mmで、重さは17kgである。最大造形サイズは130×70×70mmで、積層スピードは10mm/h(積層ピッチ:0.15mm)。XY解像度は0.2mmで、Z軸分解能は0.01mmである。
同製品向けに、造形後の仕上がりが良く、加工のしやすいUV(紫外線)硬化樹脂「imageCure(イメージキュア)」を専用開発。一層ごとにスライスした3Dデータを、UV-LED(紫外線発光ダイオード)を光源とするプロジェクタから順次照射し、樹脂槽内の樹脂を一層ずつ硬化させることで造形を行っていく。この方式の場合、レーザーを点で照射しながら硬化させるものに比べて、造形時間が短縮できるという。また、硬化した樹脂を引き上げながら積層する「吊り下げ方式」を採用したことにより、樹脂槽のプール内に沈み込んで積層する方式に比べ樹脂の使用量を抑えることもできる。
同社初となる3Dプリンタの開発リーダーを任された大草圭吾氏は、「これまでの切削加工でやってきた技術と違った開発テーマがあった。ARM-10は、光造形法を採用しており、光源となるプロジェクタとUV硬化樹脂の開発が苦労した。そして、さらにそれらを組み合わせ3Dプリンタとしてきちんと機能するよう最適化するプロセスは本当に大変だった。ユーザーの皆さんには、われわれエンジニアが想像もしていなかったようなものを出力してもらいたい。何もないところから立体物が出来上がる点が3Dプリンタの最大の魅力。ARM-10を使ってワクワク感・ドキドキ感を味わってほしい」と開発時の苦労と製品に込めた思いを説明した。
出力ソフトウェアとしては「monoFab Player AM」が標準で付属する。直観的で分かりやすいインタフェースが特徴で、3Dデータの不備を自動修復するヒーリング機能やサポートを自動生成する機能を搭載しており、初めての操作でも安心して造形できるという。
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