「第44回 インターネプコン ジャパン」内の専門技術セミナーに東京大学大学院 工学系研究科 教授 染谷隆夫氏が登壇。染谷氏が開発した、薄型の有機トランジスタの集積回路を利用して生体情報を計測できるセンサーを使えば、現行のウェアラブル端末のさらなる薄型化などに貢献できるという。
2015年1月14〜16日に東京ビッグサイトで開催された「第44回 インターネプコン ジャパン」で、専門技術セミナー「メディカルエレクトロニクスに求められる実装技術」が開催された。同セミナーに、東京大学大学院 工学系研究科 教授の染谷隆夫氏が登壇し、「フレキシブル医用デバイスと実装技術」をテーマに同氏の共同研究グループが開発した薄型の有機トランジスタの集積回路を利用して生体情報を計測できるセンサーを紹介した。従来のウェアラブル機器やセンサーの薄型化などに貢献できるという。
染谷氏のグループが開発した有機トランジスタ集積回路は、重さ3g/m2、薄さ2μmという軽量かつ薄型であることを特徴としている。4.8×4.8cm2の面積の中に144(12×12)個のセンサーが4mm間隔で配列されており、タッチセンサーとして機能する。アクティブマトリクス方式を採用することで配線数を減らし、消費電力を抑えたという。
染谷氏のグループは、この薄型の有機トランジスタ回路を、1.2μm厚のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上に作製することに成功した。従来、ヘルスケアや医療用途向けのセンサーおよび電子回路には、シリコンなどの硬度の高い電子素材が基材として用いられてきた。しかし、こうした超薄型のフィルム基板とすることで、シリコン素材などと比較して表面形状の追従性が高くなることから、人の肌にシールのように張り付けることが可能になるという。
また、薄型でありながら、生理食塩水に2週間以上浸しても、2倍以上に引き伸ばしても電気的性能を維持できるという高い耐久性も特徴だ。曲率半径5μmまで折り曲げることが可能で、ある程度丸めても性能を失うことがないという。
染谷氏のグループは、このフィルム型の有機トランジスタ集積回路の曲率半径5μmまで折り曲げられるという性能を生かして、より柔軟性の高いセンサーシステムも開発している。あらかじめ伸ばしてあるゴム基材の上にこの有機トランジスタ回路を接着させ、その後ゴムの伸長を解放すると、アコーディオンのように伸縮する波型形状の有機トランジスタ集積回路を作ることができる。人が装着しても違和感のない医療用途向けのセンサーや、激しい動きにも対応できるスポーツ用のセンサーなど、多方面への応用が可能だという。
「これまで有機物の柔らかさを生かすことで、生体との親和性を高めるエレクトロニクスの開発を目指してきた。有機エレクトロニクスというと、有機ELに代表されるように照明やテレビなどに使われるイメージが強いが、以前から医療機器などのさまざまなものにも応用できるのではないかと考えていた。特にウェアラブル機器にとって、消費電力を抑えるというのは重要な課題。この薄型の回路であれば、さまざまなウェアラブル機器の薄型化に加え、端末の駆動電圧を抑えて消費電力を低くできるメリットもある」(染谷氏)。
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