東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授らは、体に貼り付けるだけで生体情報を計測できるシート型センサーの開発に成功した。生体適合性に優れ、粘着性があり、かつ光で特定の形に形成できる新型ゲルを応用した。
東京大学大学院工学系研究科は2014年12月22日、染谷隆夫教授、リー・ソンウォン 博士研究員らが、湿布のように体に貼り付けるだけで生体情報を計測できるシート型センサーの開発に成功したと発表した。粘着性ゲルによって動いてもセンサーが剥がれないため、ヘルスケア・スポーツ・医療などへの応用が期待されるという。
現在、ビッグデータなどの情報通信技術の発展に伴い、生体情報を計測する技術の重要性が増しているという。計測精度の向上には、センサーを測定対象に直接接触させることが理想的とされ、近年は高分子フィルムなどの柔らかい素材の上に電子部品を作製する研究が進められている。
同研究グループでは、生体適合性に優れた素材のみで、粘着性があり、かつ光で特定の形に形成できる新型ゲルを開発。このゲルを応用し、湿布のように体に貼り付けるだけで生体情報の計測ができるシート型センサーの作製に成功した。
試作されたデバイスでは、ラットの心臓の表面に貼り付けると、3時間以上にわたって良好なコンタクトを維持し、信号の質の高い心電計測ができた。ゲルの素材であるポリビニルアルコール(PVA)は溶けて粘着性がなくなるため、計測後には心臓に負担をかけずにデバイスを外すことができる。
さらに、高感度で伸縮性のあるひずみセンサーも試作した。同センサーを人の皮膚に直接貼り付けることで、指の動きのような生体のダイナミックな動きを長時間・安定して計測できたという。
今回の研究では、皮膚だけでなく、心臓のような体内組織にも貼り付けできることが示されたことから、今後は体内埋植型電子システムへの応用も期待されるという。
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