しかし、これらの統合には多くの課題が残されている。「いつインダストリー4.0が思い描くスマートファクトリーやサイバーフィジカルシステムが現実的なものになるのかが分からない他、多くのステークホルダーをどのように調整するのか、誰が実現のための努力を行い、利益配分はどのようになるのか、など考えるべき問題は非常に多い」とアーノルド氏は語る。
また技術面を含めた現実的な課題として、以下の6つの課題を挙げる。
「特に半導体産業においては装置やインタフェースなどの標準化に対してそれほど積極的ではない動きがあり、これらをどのように統合していくのかは大きな課題となり得る」とアーノルド氏は指摘する。
またアーノルド氏は、企業の規模におけるインダストリー4.0実現に向けた格差も指摘する。「例えば、自動車や半導体、航空・宇宙分野などで主導的立場を取る大企業であれば、スマートファクトリーの概念に基づき、既に投資を始めており、装置などの納入サプライヤーに対し自らの“標準化”を強いることができるためサプライチェーンの統合が可能だろう。しかし、中小製造業にとっては自らの要求を“標準”とする力も予算もなく、さらに強いられた標準化に対応するスピードも遅いといえる」(アーノルド氏)。
そのため大企業が抜本的な取り組みを進められても、本来インダストリー4.0の狙いの1つでもある中小製造業では「PLC周辺など限られた一部の領域で導入を進めていくしかない状況だ」とアーノルド氏は指摘している。
それでは、現在工場に関連する標準化の動きとしてどのようなものがあるのだろうか。半導体生産に関しては、SEMIの各種規格が存在している他、ファクトリーオートメーションやインダストリアルオートメーション領域ではOPC Foundationが展開するOPCやOPC UAなどがある。その他プレス加工ではEUROMAPなどの規格が存在している。
しかし、アーノルド氏は「規格は長期にわたってサポートし続ける必要があり、どの規格がこれからも生き残っていくのかは分からない。新たな規格が生まれるかもしれない」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.