プレゼンが苦手な人にとって、最大の難関は実際に「話す」ことでしょう。「緊張して頭が真っ白になったらどうしよう」という不安から、カズ君のように話すことを全てスライドに書いてしまったり、原稿を作ってそれを読むだけということになりがちです。前回の記事でも解説しましたが、プレゼンの主役はプレゼンター自身ですので、それではダメなのです。プレゼンでは、自分の緊張を受け入れながら話せるようになることが大切です。
緊張しても、しっかりと話すことができるようになるためには以下3つのポイントを意識するとよいでしょう。
「目は口ほどにものを言う」という言葉がありますが、プレゼンでも目線の使い方は大切です。目線の使い方を意識するだけで緊張を和らげながら、自信を持った印象を聞き手に与えることが可能です。
1つ目の目線の使い方は「プレゼンの開始時は会場の後方を見る」です。プレゼンの冒頭では、自己紹介やプレゼンの概要説明が行われることが多いですが、その際にPCの画面や目の前に座っている人ばかりを見てはいけません。目線が下がってしまいどことなく自信がない印象を与えてしまいます。緊張していると目線が下がりがちになるので、目の前ではなく会場の後方に目線をやります。具体的には、会場一番奥の左右に座っている人を交互に見ながら話すのが良いでしょう(もし、奥の席が空席の場合は、会場後方の壁に目線をやりながら話します)。こうすることで、自然と目線が上を向き、自信のある印象を与えることが可能です。
2つ目の目線の使い方は「自分の味方を見つけてアイコンタクトする」です。プレゼンを進めていると、あくびや居眠りなど一部の参加者の明らかに興味がない姿が目に飛び込んでくることがあります。そうすると、そればかりが気になってしまい自信がなくなり、とたんに緊張が増してくることがあります。そのような場合の対処法として、自分の話を積極的に聞いてくれる味方をプレゼンの最初で探すようにします。大抵、どんなプレゼンでもフムフムとうなずきながら聞いてくれる人が1人や2人はいます。そのような味方となる聞き手と定期的にアイコンタントしながらプレゼンを進めるようにします。そうすることで、自分の話を聞いてもらえているという余裕が生まれ、落ち着いてプレゼンを進められます。
プレゼンで緊張すると早口になるので、ゆっくりしゃべることを心掛けている人は多いでしょう。もちろん、それはそれで大切なのですが、プレゼンの口調で大切なのはスピードよりも「抑揚」です。なぜなら、抑揚がない単調なプレゼンでは、どんなにスピードが最適でも聞き手は飽きてしまうからです。抑揚を付けるポイントは、声の高低とスピードを使い分けることです。
図10のように聞き手を説得したい場合は「低い声×ゆっくり」で話したり、聞き手を驚かせたい場合は「高い声×早口」で話すなど、緩急を付けることで、聞き手が飽きない抑揚のあるプレゼンができるようになります。
話し方の最後のポイントは「間」です。シーンとした沈黙(間)はどんなプレゼンターも嫌なものです。間を空けたくないという心理からプレゼンのスピードがどんどん早くなってしまうことがあります。しかし、間は聞き手が情報を整理したり、考えたりするのに必要なものなので意識的に間を取ることが、結果として分かりやすいプレゼンへとつながります。間を取るための具体策は、「。」を意識して短い文章で話すことです。間がなく、聞きづらいプレゼンというのは、図11のように文章にすると「、」が多くなっています。
通常の会話で「。」を意識して話すことがないため、プレゼンでは「。」を意識して短い文章で話すことが大切です。そうすることで、適度に間を作ることでき、聞き手は情報を整理しながら聞けるようになります(図12)。
今回は、スライドの作り方や話し方などプレゼンにおけるデリバリーの基本について解説しました。プレゼンの基本を教わるという場面があまりないため、多くの人が「これで良いのだろうか」と思いながらもスライドの作り方や話し方は我流であると思います。自分なりのアレンジは大切なことですが、基本をしっかりと押さえることでプレゼンの質を一定レベル以上に安定されることができるようになるでしょう。
次回は、「ライティングスキル(文章作成術)」について解説します。
小山新太(こやまあらた)
MPA所属 中小企業診断士。販売促進やマーケティング、コミュニケーションスキルを専門とし、中小企業支援やセミナー講師などを行っている。
「MPA」は総勢70人以上の中小企業診断士の集団です。MPAとは、Mission(使命感を持って)・Passion(情熱的に)・Action(行動する)の頭文字を取ったもので、理念をそのまま名称にしています。「中小零細企業を元気にする!」という強い使命感を持ったメンバーが、中小零細企業とその社長、社員のために情熱を持って接し、しっかりコミュニケーションを取りながら実際に行動しています。
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