酵素によるバイオ発電の技術を利用して、体に張ると微弱な電流が発生し、皮膚を通した薬の浸透が促進される「バイオ電流パッチ」を開発。電池などの外部電源を必要とせず、張るだけで薬剤の浸透を加速できる。
東北大学は2014年11月18日、東北大学大学院工学研究科の西澤松彦教授の研究グループが、酵素によるバイオ発電の技術を利用して、体に張ると微弱な電流が発生し、皮膚を通した薬の浸透が促進される「バイオ電流パッチ」を開発したと発表した。
皮膚の表面から薬を投与する「経皮投薬」としては、鎮痛剤を浸透させる湿布や禁煙用のニコチンパッチなどが知られている。これら経皮投薬は、数10μAの微弱電流により、各種有効成分の皮膚内への浸透が数倍〜数10倍に加速する効果があるという。そのため、局所麻酔剤の高速投与や、クリニックで行う美肌成分、発毛・育毛成分の浸透促進などに広く利用されてきた。しかし一方で、電源・給電のための配線などから成る装置が必要とされ、家庭での個人使用には適していなかった。
今回、同研究グループでは、酵素によるバイオ発電の技術を利用し、微弱電流で生じる組織液の流れに乗った薬物浸透(イオントフォレシス)が起こるバイオ電流パッチを開発した。皮膚パッチに自ら発電する能力を搭載することで、電池などの外部電源を必要とせず、張るだけで薬剤の浸透を加速できる。
材料には、生体・環境に優しい有機材料のみが使用され、軽く・薄く・柔らかく、使用後はそのままゴミ箱に捨てることができる。微弱電流で生じる皮下組織液の流れは、それ自体にマッサージ効果やシワ取り効果があるため、経皮投薬に限らず幅広く応用できる。そのため、家庭用の使い捨てセルフケア用品としての普及が期待できるという。
なお、同研究成果の一部は、2014年11月17日にバイオマテリアル分野の有力誌『Advanced Healthcare Materials』にオンライン掲載された。
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