それでもソニーがスマホを再建しなければならない理由製造マネジメントニュース(4/5 ページ)

» 2014年11月25日 16時00分 公開
[三島一孝,MONOist]

ソニーとして勝てる領域で勝負する

 これらの市場分析を基に、具体的に展開する製品や組織の絞り込みを行うというのが、今回の構造改革の概要となる。具体的には地域ごとや製品ごとに変わってくるが、全体的には「現在ソニーが強い地域において、高付加価値モデルを、オペレータ経由で販売する」というのが主軸となる。

 具体的には、以下の4つの点において、「集中と選択」に取り組む方針だ。

  • 地域ごとに最適なセールスマーケティング戦略を構築するとともに、それぞれの投資効率を高め、収益管理を強化する目的で必要に応じて再編を検討する
  • 価格競争力の強化のために、製品モデル数の厳選などを通じて、ハードウェア・ソフトウェアの開発効率を高める
  • 広告宣伝費の費用対効果の向上を目的として、データベースマーケティングの比重を高め、既存顧客にアプローチすることで継続購買率を高める
  • 本社機能や間接組織の再編などの構造改革を推進する

継続購買率を50%以上に

 具体的には、現在世界13カ国に点在する営業拠点およびグローバル販売機能を持つ英国拠点、本拠地として開発機能などを持つ日本の拠点の3層構造を整理しスリム化を図る。

 また、スマートフォンの開発コストが増大したことで、競合企業が50%程度のモデル数削減を実現し開発リソースを集中させる戦略を取っていた。しかし、ソニーでは削減率が30%にとどまり、収益悪化につながった。これを改善し、モデル数の削減と1モデル当たりの経営資源の集中に取り組む方針だ。

 さらに、市場環境からソニーが強みを持つのは「成熟市場の高付加価値モデル」が明らかであるため、既存顧客の買い替えを重視する方針に転換。顧客データによるデータベースマーケティングを強化することで、2017年には継続購買率50%以上を目指すという。十時氏は「既に競合企業では50%以上の継続購買率を持つ企業がある。優れた先行者がいる場合はそれをベンチマークとし、同様のやり方を進めていく」と語っている。

photophoto スマホの製品モデル数の削減率の競合比較(左)と、Xperiaの継続購買率の指標(右)(出典:ソニー)(クリックで拡大)

 また営業拠点や本社機能などの整理によりOPEX(Operating Expense、事業運営費)の30%の削減を実現し、損益分岐点の引き下げに取り組む。また粗利率も2〜3%の改善を進め「売上高が2〜3割下がっても利益が出せる体制にする」(十時氏)。

photo 損益分岐点の引き下げ目標(出典:ソニー)(クリックで拡大)

 十時氏は「2014年度中に具体的な構造改革の計画を組み立て、2015年度は実際に構造改革を行い、その期間中に終わらせる。2016年度からは安定的に収益に貢献できる体制を構築したい。既に社長就任後、シニアマネジャークラスには、12カ月でトランスフォーメーション(事業変革)をやり切るというメッセ―ジを出した」と語っている。

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