ORiNの発展には、2つの方向性が考えられる。
1つは「制御」的活用法である。例えば、これまでの製造工程の設備を制御する手法として、ロボットを含むFA機器は各メーカーが提供する専用言語を使用し、ラインの統括制御をPLC(ラダー言語)で行うというのが一般的であった。この手法は現在でも広く使われており、実績を考慮しても信頼性は高い。
一方、さらに多くのユーザーに設備の自動化を推奨する手法の1つとして「パソコンを活用した設備制御」がある。決して、パソコン制御を主流と考えているわけではないが、ユーザーが自由に選択できる環境を提供するという観点から「パソコン統括制御」は価値がある。それを実現する基盤としてORiNは、極めて有効な手段となり得る。
もう1つの方向性は「監視」的活用法である。最近、よく耳にするようになったドイツのモノづくり革新プロジェクト「Industrie 4.0」でも提唱されているように、固定的な生産ラインの概念をなくし、動的・有機的に再構成できるセル生産方式を目指した「スマート工場の実現」には、ORiNの設計思想が最適である(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【後編】)。
工場情報システムとの連携や、業務効率化、さらに製造ラインで活用されるFA機器の故障の予知/予防など、さまざまな状況に対応できるアプリケーションを開発するためには、対象となるFA機器との接続が必要となる。その接続を実現する手段にORiNを活用すれば、上位システムとの連携や新たなシステムの構築に大きな手助けとなる。
工場を「つながる」環境にする「標準化」には、開発環境、アプリケーション、フィールドバス、通信インタフェース……とさまざまな分野の整備が必要で、実現はたやすいものではない。しかし、その中でORiNは、パソコンとデバイスとを接続する通信インタフェースの国際標準規格であり、標準化を推し進める原動力となり得る存在となっている。
また、別の側面から見ると、数少ない日本発の国際標準規格でもある。日本には、産業機器分野で世界のリーディングカンパニーが多数存在している。これは同時に、互いの利害調整が難しく安易に標準規格に対応できない状況にあることも示している。まさに敵は国内にあると言っても過言ではない。しかし、日本企業が一致団結し、ORiNを世界に発信していけるならば、新たなモノづくりの形を日本主導で示せる可能性も広がるかもしれない。
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