宇宙まで見据える「建設機械」の世界〜災害に強い社会の構築に向けてディープな「機械ビジネス」の世界(6)(1/2 ページ)

本連載では、産業ジャーナリストの那須直美氏が、工作機械からロボット、建機、宇宙開発までディープな機械ビジネスの世界とその可能性を紹介する。今回は、日本が高い国際競争力を持つ「建設機械」にスポットを当てる。

» 2026年02月12日 06時00分 公開
[那須直美MONOist]

 日本の建設機械産業は世界でも高いシェアを持ち、国際競争力があります。その理由の1つとして、「高い製造技術をベースとした性能の良さ」が挙げられます。日本の建設機械メーカーやサービス事業者は、きめ細かなサービスを提供し、メンテナンス能力も高いので、安心と安全の面からもグローバルに高い評価を得ています。

 わが国では、台風や豪雨、洪水、土砂災害、さらに地震、津波、火山噴火といった自然災害が発生しやすく、近年の異常気象や地殻変動によって、激甚化が進んでいます。こうした状況を考えると、国土強靱化への対応を強化するのは急務といえるでしょう。そして、災害に強い社会を構築するためには、「建設機械」の存在が必要不可欠なのです。

人材不足の中で生産性を高める努力

 その一方で、建設機械を取り巻く業界は、国内産業の中でもとりわけ就業者の高齢化が進んでいる分野の1つとされています。長年にわたって現場を支えてきた熟練技術者が多く、少子高齢化の進行によって若年層の労働人口そのものが減少していることに加え、重機を扱う仕事に対して「きつい」「危険」といったイメージが根強くあり、若者の業界流入が伸び悩んでいることも要因です。

 さらに近年では、ITやサービス業など「他業界との人材獲得競争」も激しさを増しており、若手人材の採用は年を追うごとに難しくなっています。こうした状況の中で、技能やノウハウの継承をいかに進めていくかが、業界全体にとって喫緊の課題となっています。

 このような背景もあり、建設事業を支える人材の不足は深刻化。その上、国も働き方改革の一環として「長時間労働の是正」を強く求めており、従来のように人手と時間に頼った現場運営は見直しを迫られています。

 深刻な労働力不足の問題と向き合いながら、同時に現場の生産性を高めていくためには、限られた人員と労働時間の中で、いかに効率よく成果を生み出すかが重要になります。言い換えれば「人手をかけず、少ない労働時間で、最大の成果を上げる」ことが、建設業界に求められているということです。

 こうしたことから現在では、デジタル技術を駆使した、建設施工の自動化、自律化、遠隔化の技術開発が、大手建設企業や建設機械メーカー、ソフトウェアベンダーを中心に進められています。社会課題を解決に導く鍵は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の活用です。

 建設機械が活躍する現場において、最も重要視されているのは、「事故のない安全な作業環境の確保」。その実現のためにデジタル技術の活用が進んでいます。例えば、「作業中の危険行動を即座に通知する仕組み」や「作業員/建設機械の位置情報と行動情報を連携させた安全管理」、さらには「デジタル空間上で最適な施工手順を事前にシミュレーションする取り組み」など、活用の幅が大きく広がっているのです。

 また、離れた場所から現場の状況をリアルタイムで共有し、遠隔地から担当者などが現場を支援することも可能となっています。社会課題の解決につながるDXがいま、急速に進展しているといえるでしょう。

加速する「月に建物を建てる」研究

 このように、近年の建設技術は着実に進歩していますが、日本では現在、近い将来の「月面における建設活動」を目指して、地上の建設技術をさらに高度化する動きが活発化しているのをご存じでしょうか。

 国も省庁横断の「宇宙を目指す建設革新会議(略称:宇宙建設革新会議)」の下で関連事業と連携し、宇宙関係者と建設関係者が協力して現場実証など月面の宇宙開発と地上の建設事業に貢献する技術研究開発を推進しています。

宇宙建設革新プロジェクトのイメージ 宇宙建設革新プロジェクトのイメージ 出所:国土交通省

 災害が多い日本では、これまでも被害を克服するために「無人化施工技術」が培われてきました。そのためわが国は、この分野では現在、国際的にも強みを発揮できています。ただ、近年ますます激しくなっている災害への対応に加え、先ほども触れた「労働人口の減少」という状況を考えても、無人化施工技術の「さらなる高度化」と「現場への普及」が望まれています。

 そうした流れもあって、国土交通省は、文部科学省と連携して、「宇宙無人建設革新技術開発」を推進し、月面拠点建設へ適応するための技術開発を進めるとともに、地上の事業へ波及させる動きを加速させているのです。

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