その一因としてあるのが、日本の貿易黒字を支えてきた製造業の国内生産の低下が挙げられる。ものづくり白書によれば、日本の貿易黒字は主に「電機機器」「輸送用機器」「一般機械」の3品目で稼ぎ出してきたという(ものづくり白書ではこれを「輸出の三本柱」と呼ぶ)。ところが、この三本柱の貿易収支が低調で、特にエレクトロニクス製品を中心とした電機機器の落ち込みは激しい。同分野における2013年の貿易黒字は1兆7000億円で、この数字は2005年比で8割減、2010年比でも6割減に当たるという。
こうした結果はもちろん、エレクトニクス機器の領域で日本製品が海外製品に押されていることが大きな要因である他、国内向け製品も海外で作るようになったことが要因として考えられる。従来は国内で生産し海外へ輸出していたが、海外のEMS(Electronics Manufacturing Service)などを利用して生産したものを国内で展開する。そういうビジネスモデルが普及する中で、輸出が減り輸入が増えているのだ。
一方、「一般機械」についても、2010年の8兆5000億円から2013年の7兆4000億円へと貿易黒字が減少している。
一般機器の中で、貿易収支が特に悪いのが「電算機器(PC・周辺機器など)」で、2013年の貿易赤字は1兆6000億円に達した(2010年より5000億円悪化)。「半導体製造装置」も同様に、2010年から2013年にかけて貿易赤字が4000億円拡大している。
自動車などの「輸送用機器」は、2013年も高水準の貿易黒字を残している。ただし成長度合いは“横ばい”だ。2013年の黒字額は13兆6000億円で、2010年から1000億円減という結果となっている。
なお、輸送用機器については、対欧州黒字が、2010年の1兆,000億円から2013年の2000億円へと多く減少したが、代わりに、対米国黒字が、2010年の3兆5000億円から2013年の4兆4000億円へと拡大。輸送機器の米国依存度が高まっている。加えて、輸送機器の領域では、価格弾力性(製品価格による売上高の変化)の大きい「200万円」以下の低価格車を中心に現地生産(地産地消モデル)への転換が進んでおり、そうしたことも貿易黒字の伸びの鈍化につながっているといえる。
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