歴史は3Dデータで後世へ――建築文化財の3Dモデルを運用・維持管理に活用オートデスクらが協力

オートデスクは、山口県下関市にある「旧下関電信局電話分室」を3Dモデル化し、その3Dデータを建造物の運用・維持管理に役立てるプロジェクトに協力。2015年2月には大正時代の街並みと合成したリアルなCGとして一般にも公開される。

» 2014年08月07日 12時33分 公開
[八木沢篤MONOist]

 オートデスクは2014年8月6日、山口県下関市が進める記念事業「旧下関電信局電話分室(現:田中絹代ぶんか館)」の建物竣工(しゅんこう)90周年、ぶんか館オープン5周年を迎えるに当たり、建造物を3Dモデル化し、その3Dデータを建造物の運用・維持管理に役立てるプロジェクトに協力する旨を発表した。

 歴史的建築文化財が3Dモデル化され、その3Dデータが運用・維持管理にまで利用されるケースは「全国でも初めて」(同社)。さらに、下関市は今回の3Dデータを文化資料として国内外で共有するとともに、次世代に継承できるよう一般公開する予定だとしている。

 現在、国内に文化財として指定されている建造物は約1万4300棟あるという。こうした歴史的建築文化財は時間の経過とともに修繕する必要があるが、戦前に建てられたものは図面が消失しているケースが多く、修繕できずにそのまま取り壊されてしまうこともある。

 今回対象となった旧下関電信局電話分室は、大正時代特有の設計・装飾が特徴で、当時の時代背景や文化を示す貴重な建物である。下関市は、これを近代建築資料として後世に残し、一般に共有すべきと考え、プロジェクト実施に至った。

作業イメージ 作業イメージ

 プロジェクトは、NTTファシリティーズの監修の下、オートデスク、トプコンが協力。「ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)」と呼ばれる手法を用い、建物全体の3Dモデル化を図り、これを利用することによって、建物を安全に効率良く運用・維持管理できるか、ファシリティマネジメントの視点に立って具体的な事例で検証を行っていく。

 同プロジェクトにおいてオートデスクは、3Dレーザースキャナーで得られた点群データや複数の写真から高度な3Dデータを生成できる「Autodesk ReCap Pro」、建築物の設計を得意とする「Autodesk Revit」、土木インフラ向けの「Autodesk InfraWorks 360」といったソフトウェア製品を提供。建設・土木分野の業務効率向上だけでなく、将来にわたって建物の価値を維持できるよう支援を行う。

トプコンの3Dレーザースキャナー「GLS-2000」 トプコンの3Dレーザースキャナー「GLS-2000」

 旧下関電信局電話分室の3Dモデル化は、「3Dレーザースキャナーによる建物の外部と内部の計測(点群データの取得)」「データ統合とモデリング作業、CG化」「周辺地形データとの統合および大正時代の街並みの再現」などの工程を経て、2015年2月より一般公開される予定。

 トプコンの3Dレーザースキャナー「GLS-2000」による点群データの取得作業は、4日間かけて建物の内外約50箇所で実施。現在、外観のスキャンは完了しており、約4500万個の点群データが得られたという。また、50箇所でスキャンした点群データをソフトウェアに取り込んで1つの建物のモデルに結合する作業までほぼ完了しているとのこと。その先の詳細な3Dモデルの作成、属性情報を付与しながらのBIM化、CG化作業の完了は2014年12月を予定している。

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